現場が知恵を出し合う仕組みを生かす

 彼の主張はおおむね当たっており、だからこそ私は悔しい思いをしました。しかし、今ようやく、論理的でムダが大嫌いなインド人に勝つ方策が見つかりました。日本人の短所であると彼が指摘することを逆手に取れば、それを長所とした方法論で我が国システム産業の国際競争力を高められるはずだということです。

 日本人は誰かひとりで要件を決めることができない――これを裏返して考えれば、みんなで知恵を出し合い、あるいは責任を分担し合いながらでなければ、「決める」ことが苦手である、ということになります。ならば、みんなが知恵を出し合うような仕組みを作り、それによって付加価値が高めていくようにすればよいのです。実際に、自動車業界や電機業界などは、現場が知恵を出し合う「カイゼン」「創意工夫提案制度」などの方法論を浸透させ、高い品質と国際競争力が世界中で認められるようになりました。こうした仕組みをシステム業界にも取り入れられないものでしょうか。

 日本人的な現場が知恵を出し合うという考え方と、欧米的な「要件を決めて、決めた通りに作る」「多少現場が苦労してもパッケージソフトのやり方に業務プロセスを合わせる」という考え方は、折り合わないところがあるのかもしれません。インド人との議論を通じて、そう考えるようになりました。

佐藤 治夫(さとう はるお)氏
老博堂コンサルティング 代表
1956年東京都武蔵野市生まれ。79年東京工業大学理学部数学科卒業、同年野村コンピュータシステム(現野村総合研究所)入社。流通・金融などのシステム開発プロジェクトに携わる。2001年独立し、フリーランスで活動。2003年スタッフサービス・ホールディングス取締役に就任、CIO(最高情報責任者)を務める。2008年6月に再び独立し、複数のユーザー企業・システム企業の顧問を務める。趣味はサッカーで、休日はコーチとして少年チームを指導する。

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