前回紹介したデジタルポスターは,駅という閉じた空間で,鉄道会社という特定の業種に限定した事例だった。だが,共通のシステムを用意し,インターネットを介して様々な業種に向けた広域展開をする方向も見えてきた。こうした事例としては,ソフトバンク・グループのデジタル・サイネージ専門会社のCOMELが展開する「福岡街メディア」と,ソニーが構築したチェーン・ストアの事例が挙げられる(図1)。

図1●インターネットを介して各店舗のディスプレイに情報を配信
ソニーとソフトバンク・グループの例を示した。
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ネットから配信まで一括管理

 COMELの福岡街メディアは,“地域”を切り口にした事例。福岡ソフトバンクホークスの拠点となる福岡市内を中心に約500台のディスプレイを大規模小売店(GMS)やドラッグ・ストア,商業施設に設置した。各施設はソフトバンクモバイルのHSDPAサービスをアクセス回線として使いセンター側システムに接続し,同球団情報を中心とした番組と広告を受信。2008年11月から本格展開している。

 現時点では福岡街メディアのディスプレイ設置数拡大や番組内容の向上などでメディア価値を高める方針だが,将来的には他の主要都市での展開なども見据えている。デジタル・サイネージを統合的にサポートできる体制とコンテンツ企画力,ディスプレイ設置場所を確保できれば,地域を切り口にした横展開が可能だ。商店街などの単位でデジタル・サイネージを導入することもできる。

 同じくデジタル・サイネージのメディア開発やシステム開発などを展開するソニーは,ディスプレイを自社グループから調達できる強みを生かし,主に流通業界向けに展開する。

 2008年6月から大手スーパーOlympicの首都圏22店舗に,2009年3月からはいなげやの首都圏30店舗にディスプレイを設置。各店舗に引き込まれたFTTHもしくはADSL回線を利用して専用番組「ミルとくチャンネル」を配信している。セキュリティは電子証明書を搭載するUSB型専用機器を用いて,クライアント認証,データ改ざん検出,暗号鍵漏えい防止などを実現する。主婦層をターゲットとした料理番組などを軸に,広告も展開する。

 基本的に1チャンネル5分間の番組を繰り返し流している。「レジ前用」と「通路用」の2チャンネルで展開していることが多い。チャンネルは15秒以上の情報番組や広告で構成されており,送信するファイルは,Flash(容量は平均10Mバイト)かWMV(平均100Mバイト)の形式を用いている。チャンネルは1週間に一度の頻度で変更するのが基本だが,高速回線を用いているため即時対応も可能だ。

出典:日経コミュニケーション 2009年4月1日号 pp.56-57
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