商用NGN,拡大フェーズへ

 NTTグループが,NGN(次世代ネットワーク)の普及に向けて攻勢に転じる。NTT持ち株会社の三浦惺社長は,8月に開いた会見で「秋からは逐次 NGNのサービスを拡充する。光回線の販売に弾みを付けたい」と,下半期に向けNGNの需要拡大に力を入れる姿勢を強調した。

 7月末から始まった東日本地域のエリア拡大に合わせて,矢継ぎ早に新サービスも投入してきた。8月には,企業向けのVPNサービスを強化。9月中にも 1Gビット/秒まで使える高速回線の提供,NGNのQoS機能を活かす高画質・高音質通信に対応する端末の販売開始など,拡充を急いでいる。

“潜伏期間”を終えついにベール脱ぐ

 これまでの4カ月間は,“潜伏期間”と言えるほどNGNが表舞台に立つ機会はなかった。料金は従来のサービスとほぼ一緒で,NGNだからこそ可能になったことは少なく,何より導入できるエリアが限られていた。売り出す材料にも乏しく,プロモーション活動は意図的に抑えられてきた。

 こうした状況になったのは,「2007年度内に商用サービス開始」というグループ目標の実現を優先させた結果である。「実質的にはフィールドトライアルの時と変わらない状況」(NTT東日本幹部)を継続させただけに過ぎず,多くのユーザーの期待を裏切った。4月から6月までの3カ月間に販売した「フレッツ光ネクスト」の回線数は,NTT東日本が約700回線,西日本は約80回線にとどまった。同じ期間にBフレッツなど地域IP網用の光回線がNTT東西合計で76万件も純増したのに比べれば,全く存在感を示せなかった。

 ただ,この期間にNTT東西は,NGNの本格展開に備えて社内の運用体制や技術検証を進めていた。そして秋を目前に,「当初計画した通りの性能やサービス・レベルで運用できる確信を持った」(NTT東日本の中村浩コンシューマ事業推進本部ブロードバンドサービス部アライアンス推進担当部長)という。冒頭の三浦社長の発言は,NGNがようやく本来の実力を発揮できるという宣言にほかならない。

 NGNが新たなフェーズに移ることによって,これまであまり見えてこなかったNGNの真の姿が浮上してくる。地域IP網上で提供している旧サービスから NGNへの移行ステップや,移行によって得られるメリット,ほとんどユーザーがいなかったために目立たなかった問題点も顕在化してくる(図1)。

 NGNの早期立ち上げはNTTグループにとって喫緊の課題。「2010年度末までに光回線2000万件」の達成に向け,需要をもう一段階底上げすることが求められている。さらに2012年度末までには,地域IP網を完全にNGNに移行する計画もある。その期限まであと5年を切った。秋から始まったサービス強化の内容は,NGNが地域IP網に代わって表舞台に上がれるのかを評価する最初の試金石になる。NGNがどう変わったのかを見ていこう。

図1●開始から4カ月を経てNGNが本格始動
図1●開始から4カ月を経てNGNが本格始動
エリアを広げ普及フェーズに入っていくことで,各サービスごとに新たな展開を迎える。

第1回 急拡大する光ネクスト対応エリア,新旧併売がジレンマ 
第2回 “発信できない番号”の解消目指すひかり電話 
第3回 地デジの再送信は“県単位”の制約がつきまとう 
第4回 ついに他社のVPNと肩を並べるフレッツ版VPN 
第5回 NGN版広域イーサ,IP系とは別網で運用 

出典:日経コミュニケーション 2008年9月1日号 pp.22-29
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。