米グーグルが、携帯電話機向けソフトウエア基盤「Android」を発表してからほぼ1カ月が経つ。同社でAndroidプロジェクトを率いるアンディ・ルービン氏は、Androidの狙いを「インターネットと同じレベルのイノベーションを、携帯電話の世界に持ち込むことだ」という。12月上旬、パートナー企業との交渉のために来日した同氏に、Androidを無償提供するグーグルの狙いや業界の反応、開発思想などを聞いた。(聞き手は、中村 建助、菊池 隆裕=日経コンピュータ)


米グーグル 開発ディレクター アンディ・ルービン氏

11月上旬に、携帯電話機向けのソフトウエア基盤「Android」を発表した。携帯電話業界あるいはIT業界にとって、Androidはどのような意味を持つと考えているか改めて聞きたい。

 Androidの狙いは、携帯電話業界にインターネット並みのイノベーション(革新)をもたらすことである。インターネットでは革新的なことが頻繁に起こっており、新しい製品やベンチャー企業、Webサイトが次々と立ち上がっている。それに対して携帯電話業界はどうか。インターネットの世界ほど早くないのが現実だ。例えば、製品サイクルは約半年で、インターネットの新技術を吸収するには長すぎる。

このスピードの違いはなぜ生じるのか。

 携帯電話の開発プロセスが、デスクトップ・パソコン型の革新サイクルになっているからではないか。デスクトップ・パソコン業界が描くOSを中心としたシナリオは、時代に合致しなくなっている。

 インターネットは、クラウド・コンピューティングなどといわれるように、数多くのサービスの集合体である。新しいアプリケーションを提供してくれるインターネット上のサービスがとても重要で、相対的にOSの重要度は下がっている。今やOSはサービスにアクセスする手段に過ぎない。

 Android型のモデルでは、携帯電話はインターネットにアクセスする手段になる。パソコンとは別の道を歩み、5~10年で携帯電話のOSは、サービスにアクセスするパイプになるだろう。従来のパソコンは、すべてのプログラムをパソコンに蓄積して動かしているが、それは悪いモデルだ。これ以上拡大する余地はもうない。

グーグルにとって10年規模の大プロジェクト

グーグルにとって、Androidはどんな意味を持つのか。

 以前から言っているように、グーグルの役割は世界中の情報を整理することである。グーグルにとってこのプロジェクトは、だれもがネット上の情報を利用できるようにするという狙いがある。現在の市場規模をみると、インターネットのユーザーが約11億であるのに対して、携帯電話のユーザーは約30億もいる。現段階ですら3倍の市場がある。今日のデスクトップ・パソコンと同じ水準のアクセスを、携帯電話ユーザーにも提供したい。

Androidの開発者は、グーグル社内に何人くらいいるのか。

 注意して欲しいのは、これはグーグルだけのプロジェクトではないということだ。Androidの推進団体であるOHA(オープン・ハンドセット・アライアンス)には34社が参加しており、そこには数百人単位の開発者がいる。

 グーグル社内でも数百人がかかわっているが、正確な数字は出せない。

グーグルが、社内で掲げている目標のようなものはあるのか。

 グーグルは、Androidに巨額の資金を投じている。製品ロードマップや将来製品計画も持っており、10年計画と考えている。

PCと同じ構造的な変化が10年以内に起こる

5年後、あるいは10年後に、携帯電話はどうなると思うか。

 オープン・プラットフォームのモデルが成功すると、携帯電話機のコストについては、20~25%が削減できると考えている。

 携帯電話を業界構造という面でみると、パソコンの世界の1980年代前半に相当する。つまり、ハードウエアの価格が下がって組み立てが楽になる一方で、ソフトウエアの重要度が増してBOM(部材費用)の多くを占めるようになる。パソコン業界では、84年にIBM PC/AT互換機が登場、大衆化が一気に進んだ。携帯電話業界で同じことがいつ起こるかは分からないが、次の10年以内には起こるだろう。

 コスト以外の面ではどうだろう。現在、イノベーションの多くがインターネットの上で起こっている。それ自体が、重要なイノベーションである。

 過去には、開発者はパソコンのOSを通じて、新しいサービスやアプリケーションを生み出してきた。ところが、インターネットが登場すると、開発者はインターネットを活用、OSだけでなくインターネット上のサービスを使い、さらには開発者同士がお互いを利用しあって開発を進めるようになった。

 Androidベースの携帯電話機を使うと、同じようなことが起こるようになる。10年~15年も経つと、もっと頻繁にイノベーションが起こるようになるだろう。

グーグルにとっては、将来的に携帯電話からの売り上げの方が大きくなるとみているのか

 もちろんだ。前にも述べたように携帯電話のユーザーは、現時点でも約30億人がいる。それに対して、自動車は8億、固定電話は13億、テレビは15億、クレジットカードは14億、パソコンは8億5000万、インターネットは11億だ。明らかに、携帯電話は最大のマーケットということになる。

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