車内LANはどこに使うのか

 車内LANの用途は大きく二つあります。一つは走行や車体に関係する「制御系」です。もう一つは、カーナビやオーディオなどの機器をつなぐ「情報系」です。このうち制御系は,さらに3系統に分かれます。1)エンジンなどの「パワートレイン系」,2)サスペンションやステアリングなどの「シャーシ系」,3)エアコンやドアなどの「ボディ系」です(図3)。

図3●自動車内に張り巡らされる車内LANの方式と主な用途
図3●自動車内に張り巡らされる車内LANの方式と主な用途
制御系では現在,主にCANが使用されており,その補助に低速で安価なLINが使用されている。情報系では通信速度の高いMOSTが使用されてきている。今後,制御系ではFlexRayが期待されており、高い信頼性が必要なX-by-wire(エックス-バイ-ワイヤ)に使用されつつある。情報系でもさらに高い通信速度を持ったIDB-1394の使用が検討されている。

 これらの用途ごとに,異なる種類の車内LANを張るというのが実際の姿です。例えば制御系では現在主に「CAN」が使用されています。その補助に低速で安価な「LIN」を組み合わせるケースが増えてきました。情報系では高速なMOSTが使われ始め,さらに高い通信速度を持ったIDB-1394の使用も検討されています(図4)。

図4●車内LANの主な方式と通信速度
図4●車内LANの主な方式と通信速度
ボディ系の車内LANには数十kビット/秒の通信速度しか必要としないが,情報系では数十Mビット/秒の通信速度が求められる。

 一方,制御系では高い信頼性を持った「FlexRay」の採用が一部車種で始まっています。最近注目を集めている「X-by-Wire」(エックス-バイ-ワイヤ)を実現するためです。X-by-Wireとは,従来のシャフトやギヤなどの機械的機構の制御に替えて,モーターやアクチュエータなどのECUを車内LANでつないだ電子制御で実現するシステムのことです。X-by-Wireを導入すると,機械的機構を削減することができるため,車両の軽量化や車内空間の拡大,デザインの自由度を高めることができます。

 X-by-Wireの“X”には電子制御の対象となるブレーキやシフトギア,ステアリングなどが入ります。ここではステアリングを電子制御する「ステアリング-バイ-ワイヤ」を見てみましょう。一般的な車では,ステアリングとタイヤの間にはシャフトと呼ぶ1メートル程度の金属性の棒があります。このシャフトはステアリングの回転をタイヤに伝える部品です。車種によっては,かなり長くて重い棒を使っている場合もあり,タイヤとの位置関係によってはジョイントを必要とするケースもあります。

 ステアリング-バイ-ワイヤでは,このシャフトやジョイントがなくなり,車内LANのネットワーク配線とアクチュエータに置き換わります(図5)。これは車両の軽量化に大きく貢献します。また,従来はシャフトとジョイントが占めていたスペースが不要になるため,室内スペースを広げることや,デザインの自由度を高めることができます。

図5●「ステアリング・バイ・ワイヤ」の例
図5●「ステアリング・バイ・ワイヤ」の例
ステアリング・バイ・ワイヤとは,シャフトやギアなどを用いた機械的機構の代わりに,ECUやモーター,アクチュエータなどを車内LAN(ワイヤ)でつないだ電子的機構のステアリングのことである。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)登録で5月末まで無料!