[使う]チーム利用はルールが必要,自分勝手では効果が出ない

 UMLツールの低価格化によりチームで利用するケースが増えているが,単にツールを導入するだけでは効果は上がらない。チーム利用ならではのルールを設けることが必要だ(図2)。

図2●自分勝手なツール利用はチームの生産性を下げる
図2●自分勝手なツール利用はチームの生産性を下げる
UMLモデリング・ツールを導入しても,メンバー一人ひとりがチームとしての生産性向上を考えないと効果は出にくい。チーム標準のツールを定める,共通リポジトリのモデル要素を使う,といったルールは最低限守る必要がある

 2005年に「JUDE Professional」を全社的に導入した日立システムアンドサービスの英氏は,使用するツールの統一をポイントに挙げる。「機能は似ていてもツールによって図の表現が微妙に異なるし,データの互換性に問題がある。また協力会社も含めてツールの使い方を教育する手間を考えると,チーム内の標準ツールを定めて統一することが必要だ」。

 日本システムウエアで「Enterprise Architect」を社内標準に定め現場への導入を促進している園部康弘氏(ソリューション事業本部 Webソリューション事業部主任)は,「メンバー個人よりもチームの生産性を高めるという目的を,全員に認識させることが重要」と指摘する。園部氏は以前,6人のプロジェクト・メンバー全員にツールを導入したが,効果が上がらず苦労したことがあった。メンバーによっては,共有リポジトリにクラスが登録されているのに,それを使わず同じクラスとそのオブジェクトを新たに作成していた。そのためクラス図とシーケンス図で食い違いが生じ,修正作業に追われた。そこで園部氏は「成果物は,印刷されたUMLの図ではない。共有リポジトリに出来上がるモデルだ」と繰り返し説き,メンバーの意識を共有リポジトリに向けさせた。そうして共有リポジトリで必要な図形要素を探すことを,習慣化させていったという。

クラス図の自動変換機能を開発

 このほかにも「パッケージなどの図形要素ごとに責任者を明確化する」「早い段階でユースケースやクラスなどのひな型をリポジトリに登録し,メンバー間のブレをなくす」といったことが重要だ。そうしたルールを徹底させUMLツールのチーム利用を軌道に乗せれば,次のステップとして設計開発プロセスの改革につなげられる。

 その一例が,東芝ソリューションの取り組みだ。同社はUMLツールのXMIによる入出力機能を使い,概念レベルのクラス図を,詳細レベルのクラス図に自動変換するフィルタを作った(図3)。XMIの利用は,ツール間のデータ・コンバートでは互換性の問題があるが,この使い方であれば問題はない。

図3●東芝ソリューションにおける,XMIフィルタを使ったクラス図の自動変換
図3●東芝ソリューションにおける,XMIフィルタを使ったクラス図の自動変換
東芝ソリューションは,「XMI(XML Metadata Interchange)」というUMLモデルの標準データ形式を利用して,概念レベルのクラス図を詳細レベルのクラス図に自動変換するフィルタを開発した。自社独自のフレームワークを前提としており,「制御」「処理」「DB」といった層ごとに,クラス名を英語に変えたり,スーパークラスや共通の属性および操作を追加したりする。画面遷移の設定ファイルを自動生成することも可能である
[画像のクリックで拡大表示]

 このフィルタは,Strutsをベースにした独自のフレームワークを前提にしており,概念レベルのクラス図における「画面」「制御」「処理」「DB」という層ごとに,クラス名を変換したり,決められたスーパークラス(汎化関係にあるクラス)を追加したりする。

 もっとも自動で出来上がるのは,メッセージの経路などの点で多少の無駄があるクラス図だという。それでも「一定の手順にのっとっているので,誰にでも理解しやすく保守開発しやすいクラス図になり,品質の向上につながったと考えている」(このフィルタの開発を主導したソリューション技術統括部 技術担当主幹 山城明宏氏)。

 UMLツールは,モデルの品質を向上させたり,作業を効率化したりする基盤になる。東芝ソリューションの取り組みは,その証明と言える。

出典:日経SYSTEMS 2007年1月号 103ページより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)登録で5月末まで無料!