5月上旬,米Gartnerのアナリストたちが「MicrosoftはWindows Vistaのリリースを,2007年の中盤まで再度延期する」と主張して,「Vista Deathwatch(Vista臨終の見取り)」のようなことを始めた。以下に述べることは前にも書いたと思うのだが,どこを探してもその文章が見つからないので,もう一度このスクープを紹介することにしよう。

 2006年の春,MicrosoftはGartnerのアナリストを招いて,同社内部のWindows Vista用バグ検出システムを視察してもらった。Windows Vistaが確かに予定通りに進んでいるということを,Gartnerのアナリストに分からせるためだ。しかし残念ながら,Gartnerはこの情報に接した後,全く逆の結論を下してしまった。「Windows Vistaは出荷にこぎつけられない可能性がある」と同社は述べたのだ。だがMicrosoftはGartnerの守秘義務に縛られていたため,Gartnerが報告書とそれに付随する暗い予測を出すまで,公の場でGartnerを非難できなかった。しかし,Microsoftの社内は煮えくり返っていた。

 ある社内電子メールにはこう書かれていた。「ちょっとしたミス?そんなわけはない。Gartnerには記事を書くのを思いとどまらせるために,バグ・データベースや主要な開発者たちへのアクセスまで認めたのだ。過去にこのようなアクセスを認めたことはない」

 一方,Windows Vistaの「ビルド5381」は,ベータ2に向けて第三者による評価段階に入っており,Microsoftは5月22日の期限に間に合わせられると信じていた。ベータ2の厳しい要件を満たすため,Microsoftは連日非常に細かな変更をビルド5381に加えていった。そのため「5381.1」や「5381.2」といったビルドが毎日のように登場した。

 5月5日,Microsoftはこっそりとビルド5381をテスターにリリースした。ビルド5381がリリースされたのは,ベータ2が非常に重要なので,より多くの人から最終的な合格の判断を得る必要があると同社が考えていたからだ。これは筆者にとっても,全くの驚きだった。まもなくこういうリリースがあるという予告が全然なかったからだ(Microsoft社内で,このビルドは「ベータ2 Preview」と呼ばれていた)。

 当時筆者は「ビルド5365を使ったことのある人なら,今回のビルドに驚くことはあまりないだろう」と記している。「新しい壁紙が多数追加されている。Windows Vista版のMedia Centerはアップデートされて,Xbox 360でMedia Center Extender機能を利用できるようになった。目新しいことといえば,これくらいだ」。筆者はこのビルドをレビューしないことにしたが,スクリーンショット・ギャラリーは提供した。Microsoftと同様に,筆者もベータ2を楽しみにしていたのだ。Microsoft内部では,5381.5や5382.0,5383といったビルドが繰り返し作られていた(さらにRC1の流れの一環として,542xビルドも日々開発されていた)。Microsoftはベータ2を世界中の100万人以上に出荷することを考えていたのである。そして,失敗を犯さないように真剣に取り組んでいた。

2006年5月:ついにベータ2がリリース

 5月17日,Microsoftは筆者にベータ2の説明をしてくれた。ベータ2の対象は広範で,企業ユーザーと消費者の両方を含む一般的なPCユーザーを対象としていた。筆者が聞いた話では,ベータ2は第三者に預託されており,次の週に完成するということだった。そして,これに続くのがコンシューマ・プレビュー・プログラム(CPP)だ。このプログラムによって,Microsoftはほしい人すべてに,Windows Vistaベータ2(とその後のRC1)を提供するのである。

 Microsoftによると,ベータ2で改善された点としては,パフォーマンスや互換性,そしてUACの動作だという。さらに同社は,二段階の発売計画を宣伝しはじめた。つまり企業に対しては11月に発売し,より規模の大きい消費者に対しては1月に発売するという計画のことだ(Gartnerの恐怖を煽るような発言に反して,これらの目標は後に達成される)。

 Microsoftがベータ2をWinHECで出席者に配布する1週間以上前に,筆者はベータ2のコードを受け取っており,詳細なレビューと多数のスクリーンショット・ギャラリーの作成に取り組んでいた(写真5)。ベータ2は大規模なリリースではあったが,以前の暫定ビルドほど安定していなかった(そして腹立たしいことに,ほんの数週間後にMicrosoftが出荷した暫定リリースでは,安定性が向上していた)。

写真5●ついに登場したWindows Vistaベータ2
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 筆者は当時こう書いている。「ベータ2には,多くの人がWindows XPの代わりに使えるほどの安定性や信頼性が備わっていない,と筆者は考えている。だがデュアル・ブートに使うにはちょうどいいのではないだろうか。デュアル・ブートだとユーザーはたとえベータ2で怖い思いをしても,いつでも好きなときに安全で使い慣れたXPに戻ることができるからだ」。またこうも書いた。「パフォーマンスは標準以下だ。だが公平に言って,Microsoftはまだパフォーマンス向上にそれほど取り組んでいない。とは言っても,Vistaは順調に成熟している。これからもいくつかの問題は発生するだろうが,今後はVistaを中心に使っていけるようになればいいと思う。だが多くの人に忠告しておきたいのは,Vistaをテストするのは結構だが,あまり早まってVistaに完全移行しようとしないほうがいいということだ。現時点では,完全移行してもXPのパフォーマンスと互換性を失って悲しい思いをするのが関の山だろう」

 ベータ2はWinHECでリリースされ,Microsoftは6月8日にCPPを通じて同ビルドを一般に公開した。これで何年も待たされた多くの人々が,ようやくWindows Vistaに触れられるようになった。「Microsoftは,Windows Vistaカスタマー・プレビュー・プログラム(CPP)を開始したことによって,リリース前のテスト版Windows Vistaに対してこれまでで最も大規模なアクセスを可能にした」とMicrosoftの幹部の一人は当時筆者に話してくれた。「CPPのおかげで,他の手段ではリリース前のWindows Vistaにアクセスできない開発者やITプロフェッショナルの方々が,コードを入手してテストに取り掛かかれるようになった。さらにCPPの一環として,テクノロジ・マニアもWindows Vistaが可能にする様々な消費者を想定したシナリオをテストできる。こうして多くの人々がリリース前のコードを入手できるようになったことは,Windows Vista開発における画期的な出来事だ。テスターからのフィードバックによって,Microsoftは同製品の一部をさらに洗練させられるだろう」。適度な期待を持ってもらうために,筆者は人々がCPPに期待してもよいことを解説する記事を発表した。

互換性に問題があるベータ2

 ベータ2はひどい出来というわけではなかったが,深刻なハードウエアとソフトウエアの互換性問題を抱えていた。これが公開リリースであることを考えると,こうした問題があるのが筆者には奇妙なことに思えた。さらにベータ2は,バグがひどかった。過去の暫定ビルドが非常に安定していたことを考慮すると,これは興味深い問題だ。6月25日,Microsoftは暫定ビルドであるWindows Vistaのビルド5465をテスターに提供した。このビルドは表面的な部分ではベータ2とそれほど変わらないが,信頼性や使い勝手,パフォーマンス,最終的な微調整という点では,劇的に向上していた。Microsoftがなぜこのビルドを一般に出荷しなかったのか,筆者には不思議でならない。まあ,そんなことを言っても何も始まらないが。

 6月が終わりに近づいたころ,Windows Vistaは岐路に立っていた。最終的には約200万人の手に渡った,一般向けのベータ2はひどい出来というわけではなかったのだが,Microsoftはベータ2よりもはるかにいいものを作れるということを,その後の暫定リリース群は示唆していた。同社はWindows Vistaをもう一度延期して,11月と1月に設定した締め切りに遅れるのだろうか? それとも,Gartnerが間違っているということをもう一度証明することができるのだろうか? この答えはすぐに明らかになる。Microsoftはこの後,立て続けに安定度の増したリリース候補版ビルドを連発し,Windows Vistaを完成に向けて推し進めたからだ。

 次回:最終回,2006年後半に続く。

Windows IT Pro, (C)2007. Penton Media, Inc.

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