量子効率スペクトルシミュレーションソフトのインターフェース
(出所:産総研)
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太陽電池表面の凹凸の有無による入射光経路の模式図
(出所:産総研)
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収集長による量子効率スペクトルの変化のシミュレーション結果
(出所:産総研)
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CIGS太陽電池の量子効率スペクトル、短絡電流密度、電流損失のシミュレーション結果。◯が実験データ、赤線がシミュレーション結果を示す
(出所:産総研)
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 産業技術総合研究所(産総研)は9月25日、CIGS、ペロブスカイト、CZTSなどの薄膜型太陽電池の量子効率スペクトルを高精度にシミュレーションできるソフトウエアを無償公開した。岐阜大学との共同開発によるもので、太陽電池の性能評価に用いられる量子効率スペクトルや、このスペクトルから算出できる短絡電流密度を、膜厚、バンドギャップ、光吸収層の品質パラメーターを変化させながらリアルタイムにシミュレーションできる。

 量子効率スペクトルは、太陽電池を作製する際は必ず評価する基本特性であり、変換効率に直接影響する短路電流密度を計算できるため、量子効率スペクトルのシミュレーション技術は、デバイス設計や膜質評価の標準的な手法として幅広く利用できる可能性がある。その一方、従来は膜厚を入力することで量子効率スペクトルをシミュレーションする技術はあったが、高精度なシミュレーションに必要な太陽電池の波長ごとの反射率(反射スペクトル)の適切な光学モデル、光吸収層の膜質を考慮する技術、精密な光学定数は整備されていなかった。

 CIGS、ペロブスカイト、CZTSなどの次世代太陽電池の開発において、変換効率の向上および構成する薄膜材料の選択、膜厚や導電率の調整など構造の最適化に長い時間が掛かっていた。また、開発途上の膜の品質を簡便かつ定量的に評価する方法は確立していない。今回公開したソフトは、太陽電池の各層の膜厚や収集長を入力・変更することで、量子効率スペクトルのリアルタイムシミュレーションが可能で、太陽電池の特性予測や膜質を評価できる。

 太陽電池を構成する各層の物理膜厚と光学定数だけでシミュレーションを行うと、薄膜表面が平たんな条件で計算することになり、量子効率スペクトルに著しい光学干渉の効果が表れる。実際に太陽電池を構成する薄膜は、表面の凹凸が実効的に反射防止の機能を果たし、光学干渉効果は顕著に現れない。同ソフトでは、薄膜の凹凸による反射防止機能を取り込んだ光学モデル(ARC法)を実装することで、反射防止条件(光学干渉がない条件)での反射スペクトルを計算し利用できるようにした。

 また、太陽電池の研究開発段階では光吸収層の品質が十分でない場合が多い。光吸収層の品質は量子効率スペクトルに大きな影響を与えるため、同ソフトでは光吸収層の膜質を収集長として取り込んだモデル(e-ARC法)を用いてシミュレーションを行う。収集長により光吸収層の品質を定量的に評価できるほか、実験結果とシミュレーション結果を比較して光吸収層の品質を定量評価することが可能。

 同ソフトで計算される量子効率スペクトルを利用することで、太陽電池の短絡電流密度も計算できる。太陽電池を構成する各層の波長ごとの吸収損失も計算可能で、層ごとの電流損失も把握できる。このほかにも、各層のバンドギャップの増減、さまざまな材料の特性に応じた光学特性が計算できる物理モデルを利用した光学定数の計算機能、光吸収層に任意の組成傾斜がある場合のシミュレーション機能なども備えた。

 シミュレーションソフトと合わせて、CIGS、ペロブスカイト、CZTSを構成する各材料の光学定数を提供。これらの太陽電池のシミュレーションをすぐに行える。今後は、結晶シリコン太陽電池、III-V族太陽電池などのバルクタイプの太陽電池、それらを含む多接合型の太陽電池のシミュレーション技術まで適用範囲を拡大し、幅広い種類の太陽電池を精密に評価できる技術として改良を目指す。