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光合成細菌の「光捕集タンパク質」解析、太陽光の高効率利用に道

2018/05/29 08:29
工藤宗介=技術ライター
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 岡山大学らの研究グループは、光を捕集して電子を伝達するタンパク質の構造を解明した。光合成細菌を対象に解析した。このタンパク質は複合体「LH1-RC」と呼ばれており、巨大な膜の立体構造を形成している。

 光合成は、太陽光を高効率に化学エネルギーに変換する過程であり、今回の成果は、進化初期に光合成細菌が獲得した光の有効利用と電子伝達反応の仕組みを明らかにした。英国の科学誌「Nature」に4月4日に掲載された。

 太陽光を利用して水と二酸化炭素から糖と酸素を合成する植物タイプの酸素発生型光合成は、生物進化の初期に嫌気的な光合成細菌の酸素非発生型光合成から進化したと考えられている。このような光合成細菌で光の捕集・伝達および電子伝達を担うのがLH1-RCで、合計36個のタンパク質と多数の色素などの補欠因子から構成される。

 研究グループは今回、紅色硫黄細菌の一種で、熱に強いThermochromatium tepidumのLH1-RC複合体を高純度に精製し、その良質な結晶を作成した。その構造を、大型放射光施設SPring-8の放射光X線を用いて、1.9オングストローム(1オングストロームは1000万分の1mm)という非常に高い分解能で解析した。

 同複合体は完全に閉じたリング状の構造を持ち、反応中心RCの周囲を16対のα-βアンテナタンパク質が取り囲んでいることが分かった(図1)。

図1●LH1-RCの構造
(a)側面から見たタンパク質の構造。(b)側面から見た色素、水分子の分布。黄色はカロテノイド、薄ピンク色のドットは水分子を表す。(c)上から見た断面図。(d)上から見た色素(バクテリオクロロフィル)の分布と、色素間の距離(出所:岡山大学)
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 RCと周囲のアンテナタンパク質LH1との間には多くの脂質分子、キノン分子などが存在し、密な領域となっていた。電子を受け取る分子として働くユビキノン分子は、これまで単離状態のRC構造では1個のみ見つかっていたが、今回の構造解析では合計5個見つかった(図2)。

図2●電子受容体として働いているキノン分子の分布
(a)LH1-RC全体のキノンの分布。(b)リング状にある穴に挿入されているユビキノン(赤)の様子(出所:岡山大学)
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 その結果、電子を直接、受け取るユビキノンの交換経路やリング内外をまたがる交換経路が明らかになった。さらに、ユビキノンにいたる水素イオンの輸送経路、複合体の安定性に重要な役割を持つカルシウムイオンの結合部位の詳細な構造が明らかになった(図3)。

図3●LH1-RCにおけるカルシウムイオンの結合部位と構造
(a)カルシウムイオンの結合部位。(b)カルシウムイオン結合部位の詳細な構造(出所:岡山大学)
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 今回得られた成果は、光合成における光の高効率利用および化学エネルギーへの変換メカニズムを解明するのに重要な基盤を提供する。また、太陽光を人工的に高効率に利用する手法についても重要な知見を提供するという。

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