東京工業大学は、ネットワーク結合された発電機群の同期を実現するための基本原理を解明し、同原理に基づいた電力ネットワークの集約モデルを構築する手法を開発した。4月27日に発表した。

 このモデルを使うと、送電網で複雑に結合された発電機群の振る舞い(回転子の位相角や連結点の電圧値など)を効率的に解析・制御できるという。

 火力発電所など複数の発電機群の回転子の位相角が揃う「同期現象」は、電力の安定供給に深く関係している。ある発電機が同期しなくなると、その発電機や周辺の発電機が安全運転できなくなり、停電などの重大事象を引き起こす恐れもある。

 一方、大量導入が見込まれる太陽光発電などの再生可能エネルギーは、天候や気候などの変化によって発電量が不規則に変動するため、発電機群の同期を維持するのがより難しくなると予想される。そのため、同期現象の解明は重要とされてきたが、従来は数値シミュレーションに基づくアプローチが主流で、原理を理論的に解明した研究は行われていなかった。

バス(連結点)に関して対称な電力ネットワーク例
(出所:JST)
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2組の対称な発電機群とバス(連結点)群をクラスタとした集約モデル
(出所:JST)
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 今回、電力ネットワークのモデリングや安定性解析、安定化制御に関する一連の研究成果を、グラフ理論という数学理論の観点から検討した。グラフとは頂点と辺で構成されるネットワーク構造の概念で、これを電力ネットワークに当てはめると連結点は頂点、送電線は辺で表現できるという。

 また、送電網でネットワーク結合された発電機の振る舞いは、微分方程式と代数方程式をまとめた複雑な方程式(微分代数方程式)で表現される。微分方程式はニュートンの運動の第2法則から導き出される「発電機の時間変化」を、代数方程式はオームの法則やキルヒホッフの法則から導き出される「送電網の連結点における電力バランス」を示す。

 このような微分代数方程式の解析は、従来はKron縮約と呼ばれる簡略化手法によって、数学的に等価な微分方程式モデル(Kron縮約モデル)に変形して行うのが一般的だった。しかし、このアプローチでは、連結点の電圧を表す変数を削除し、送電網を表す代数方程式を消去してしまうため、現実の送電網ネットワーク構造の物理法則を反映していなかった。

 今回の研究では、グラフ理論に基づき、代数方程式を消去せず送電網の連結点の電圧の同期にも着目して発電機の振る舞いを解析した。その結果、送電網の対称性が発電機群の同期を実現する基本原理であることを明らかにした。さらに、同期している発電機群とそれらと結合する送電網を同時に集約するという新たな着想を加え、数学的にも物理的にも妥当な集約モデルを構築した。

 この成果は、大規模で複雑な電力システムに対応し、電力の安定供給を実現するための解析・制御手法を開発する基盤としての発展が期待される。また今後は、コンバーターなどを含むより複雑な電力システムへの展開や、発電機群の同期現象を近似的に解析する理論構築を目指すという。

 今回の成果は、米国ノースカロライナ州立大学NSF ERC FREEDMシステムセンターとの共同研究で、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)における研究事業となる。