単結晶Si薄膜の作製プロセス。ポーラスシリコン基板の表面粗さが結晶欠陥の形成に重要な影響を与える(出所:東工大および早稲田大)
(出所:東工大および早稲田大)
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 東京工業大学と早稲田大学は3月9日、シリコン(Si)ウエハー級品質の太陽電池用単結晶Si薄膜を、従来の10倍以上の成長速度で作製することに成功したと発表した。原理的に原料収率を100%近くに向上できるため、太陽電池の発電効率を維持したまま製造コストを大幅に低減できると期待される。

 東工大は、ランプヒーターの高速走査で膜のみを高温熱処理および再結晶化する技術蓄積を持つ。平滑なSiO2で挟み込む構造を作り高速帯域加熱することで、アモルファスSiを短時間で溶融再結晶化して単結晶Siを生成することに成功した。これをポーラスシリコン基板の処理に適用し、処理条件をマイルドにすることで表面のみの構造変化を可能にするゾーンヒーティング再結晶化法(ZHR)を開発した。

 また早稲田大学は、原料Siを通電加熱で蒸発させる物理蒸着(PVD)において、原料温度をSiの融点(1414度)より高温(2000度)にすることで、高いSi蒸気圧を得て、毎分10μmでSiを堆積できる急速蒸着法(RVD)を開発した。今回、ZHR法によりSiウエハーレベルの高品質なSi薄膜を形成し、容易にリフトオフ可能なポーラス構造を実現した。さらに、RVD法によって、成長速度とSi原料収率を大幅に向上させ、リフトオフ後の基板を再利用することで原料損失を低減した。

 単結晶ウエハーの表面に電気化学的手法で2層のナノオーダーのポーラスシリコンを作製。ZHR法で表面荒さ0.2~0.3nmまで平滑化した基板を使って高速成長させ、高品質の薄膜単結晶を得た。成長膜は2層のポーラスSi層を使って容易に剥離できる。ZHR法の条件を変えて下地基板の表面粗さを低減すると、結晶薄膜の欠陥密度が徐々に減少し、最終的に約10分の1のSiウエハーレベルまで低減した。

 今回の成果は、原子数~数十層レベルとなる0.1~0.2nmの表面荒さが結晶欠陥の形成に重要な影響を与えることを示した。今後は、より太陽電池性能に直結する薄膜のキャリアライフタイムを測定し、実際に太陽電池を作製して技術の実用化を目指す。また、効率30%超のタンデム型太陽電池用ボトムセルとしての利用も検討する。