50mm角の光触媒シートを用いた光触媒パネル反応器の構造
(出所:NEDO)
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窓材の処理を変えた場合の発生する気泡の様子
親水化処理した場合は気泡が細かくなり滞留を防止できる(出所:NEDO)
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1m2スケールの大型光触媒パネル反応器の構造
(出所:NEDO)
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1m2スケールの大型光触媒パネル反応器の外観
(出所:NEDO)
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 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は1月19日、東京大学、TOTO、三菱ケミカルと共同で、人工光合成システムの実用化に向けて大面積化・低コスト化を実現する新しい光触媒パネル反応器を開発したと発表した。水深1mmで水を安定的に分解可能。さらに、1m2サイズの大型の光触媒パネル反応器を試作し、自然太陽光下でも水を水素と酸素に分解できることを確認した。

 光触媒による水分解の反応器としては、光触媒シートを十分な水に浸漬した小型のフラスコ型反応器を用いて水を撹拌するものや、太陽電池による電圧で水分解をアシストし、さらにポンプなどで溶液を強制的に対流させたりするものが検討されている。これらの反応器を実用化に向けて大面積化すると、大容量の水を保持でき十分な強度を持つ必要があり、ガラスや高強度な機能性樹脂などが不可欠になる。しかし、これらの材料を用いて大面積のものを安価に設計するのは難しかった。

 今回、水分解反応活性を持つチタン酸ストロンチウム光触媒の粉末をガラス基板上に塗布して固定した光触媒シートを用いて、水深が浅く、強制的な対流も必要としない光触媒パネル反応器を設計、開発した。50mm角のチタン酸ストロンチウム光触媒シートを格納し、その上面の紫外光が当たる面は透明な石英の窓となっており、その間から数mmの水深で水が供給される仕組み。

 チタン酸ストロンチウム光触媒は、太陽光のうち紫外光しか利用できないが、1種類の光触媒で水分解が可能なため、基板上に塗布するだけで光触媒パネルとして機能する。実験では、水深5mmの場合と1mmの場合でも生成される水素量に大きな差は見られず、水深1mmであっても光触媒シートの水分解活性が2時間以上維持され、物質の拡散の律速などに起因する損失が生じなかった。

 また、水深1mmの場合に紫外光の強度を上げ、実用化時の目標である太陽エネルギー変換効率10%に相当する状態の検討を行った。その結果、太陽エネルギー変換効率10%の場合の水素生成量である3.7ml(1cm2で、1時間あたり)を支障なく生成できることが分かった。さらに、水深1mmで窓材を親水化処理した場合、水素と酸素が細かい気泡となって連続的に流れていくことで、気泡の滞留を効果的に防止できることを見出した。

 この他にも、33cm角のチタン酸ストロンチウム光触媒シート9枚をパネル反応器に格納した、1m2スケールで水深4mmの大型光触媒パネル反応器を試作し、自然太陽光からの変換効率0.4%で水分解することを確認した。1m2サイズで化学物質や電圧印加といった外部エネルギーを投入せず光触媒と自然太陽光のみでの水分解を初めて実証し、将来的にはさらに大容量・軽量で、廉価なプラスチック材料を用いて低コスト化した光触媒パネル反応器を製作できる可能性があるという。

 今回開発した技術は、光触媒パネル反応器の大面積化に関する新たな基本原理を示した成果となる。今後、2021年度末の目標である太陽エネルギー変換効率10%の達成を目指すとともに、実用化の鍵となるさらなる大面積化や、ガラス分離技術との一体型手法の開発を進めていく。今回の研究成果は、米国科学誌「Joule」オンライン速報版で1月17日(米国時間)に公開された。