ドイツで計測された2015年の典型的な1日の周波数変動
電力取引間隔に対応する15分ごとの大きな変動が顕著に見られる(出所:東京大学)
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 東京大学は1月9日、ドイツおよび英国との国際共同研究で、北米、欧州、日本の電力網で観測された周波数時間変動の統計的特性を解析し、その数理モデルを構築したと発表した。

 再生可能エネルギーや電力取引の導入は従来の想定より大きな周波数変動の要因となり得ることを明らかにした。電力網の周波数が大きく変動すると、電子デバイス装置がダメージを受けるなどの影響があるという。

 共同研究では、それぞれ異なる電力需給の状況下にある、ドイツ、フランス、英国、フィンランド、スペイン・マヨルカ島、日本、米国の電力網周波数の時間変化に関するビッグデータを解析した。ドイツは多くの欧州諸国と統合電力網で結ばれており、フィンランドは北欧電力網に含まれる。米国は多数の領域に分割されるが、カナダの一部を含む最大規模のEastern Interconnectionの計測データを用いた。

 その結果、欧州のデータでは、15分ごとに大きな変動が見られた。この周期は電力スポット市場による新規の電力供給の時間間隔に対応しており、欧州の電力網の周波数変動は電力取引の影響を強く受けていることが分かった。

 また、周波数変動の統計的特性は、通常想定される正規分布(ガウス分布)では生じ得ない大きな変動(ヘビーテール)と分布の非対称性が広く観測された。この観測結果を再現し、電力網の規模に応じてどの程度大きな周波数変動が生じるかなどを理論的に定量評価できる数理モデルを構築した。

 マヨルカ島のような小さな電力網では、欧州大陸のような大きな電力網より大きな周波数変動を生じることを、データ解析と数理モデルの両方で示した。その結果から、大きな電力網を小さなマイクログリッドに分割すると周波数変動が大きくなると予想される。今後、アイルランドなどの小さな電力網やマイクログリッドのデータを用いてより詳しい検証を進める必要があるとしている。

 さらに、異なる電力網との比較によって、再生可能エネルギーの増加は大きな周波数変動を生み出すことが明らかになった。例えば、風力発電量と太陽光発電量の割合が大きい英国は、米国より大きな周波数変動が見られた。多くの再エネを導入するには、そのための制御やデマンドレスポンス(DR:需要応答)などの対策が重要になるとしている。

 日本では今後、再エネや電力取引が増えることが予想される。今回の研究結果は、電力網の安定性や最適性を考慮しながら効率的に制御・運用するための重要な基礎的知見を提供すると期待される。研究成果は、英科学誌「Nature Energy」に1月8日(英国時間)掲載された。