イノベーションはストレスとの闘いの連続である。失敗のリスクは常にあり、たとえ成功するとしてもそれがいつ実現するのかは分からない。ストレスは、イノベーションに挑戦する担当者にとって切実な問題である。今回は、こうしたストレスをいかに味方に付けるかをテーマにしたい。

ストレスを成長の原動力にする

 まず、ストレスに関する2つのマインドセットを紹介する。マインドセットとは、経験や教育、先入観などから形成される思考様式および心理状態のこと。暗黙の了解事項や思い込み、価値観、信念などもマインドセットである。

 1つ目は、「ストレスは役に立つ」というマインドセットだ。これは、「SSRイノベーション・マネジメント・スパイラルプロセス」(以下、SSRマネジメント)の「Stretch(背伸びした目標の設定)マネジメント」と関係が深い(2015年9月号の第8回参照)。

 ストレスになるような高い目標を部員に設定すると、「満たされている状況では変化を好まない」という人間の本質に反するため部員の心は不安定な状態になる。しかし、ストレスは心身をともに臨戦状態に導くので、うまくコントロールできれば緊張感、注意力、集中力を強化でき、イノベーションが成功する確率を高めてくれる。

 2つ目は、「ストレスは害である」というマインドセットだ。第30回(2017年7月号)で紹介したように、「我慢するストレス」に長期間さらされると、とてもイノベーションに挑戦できるような状態ではなくなってしまう*1

*1 「我慢するストレス」に長期間さらされると、副腎皮質からコルチゾールが過剰に分泌される。その結果、「免疫力が低下して風邪などの感染症にかかりやすくなる」「記憶力や学習効果が低下する」「副腎疲労を引き起こす」などの影響が出てくる。特に最後の副腎疲労は、疲れやすい、やる気が出ない、集中力や判断力が低下する、といった症状を伴うことが多いので、イノベーションにとって深刻な阻害要因となる。

 ストレスを味方に付けるために大切なことは、「ストレスは害である」というマインドセットを「ストレスは役に立つ」というマインドセットに転換することである。ストレスを成長の原動力にするのだ。ここからは次の5項目を通して、「ストレスと成長」について解説していく(図1)。

図1 ストレスと成長
イラスト:大久保孝俊
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[1]大脳辺縁系にある扁桃体の機能
[2]動物の進化とストレッサーの種類の推移
[3]Stretchマネジメントに対するストレス反応
[4]ストレス・マインドセットを「害になる」から「役に立つ」に転換
[5]ストレスを「成長するための力」に変えるSSRマネジメント

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