日本電産とNECは、無線ネットワーク経由でモーターを高精度に制御する技術を共同で開発した。有線ネットワークよりも不安定な無線ネットワーク経由でのリアルタイム制御を実現したのが特徴。通信遅延を事前に予測して制御を最適化する。

モーターの状態に合わせたコマンドを送信

 今回の技術は、日本電産のマイコン一体型ブラシレスDCモーター「インテリジェントモータ」を制御対象とする。無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)や産業用ロボット、ドローンなどへの適用を想定しており、実証を兼ねて同モーターを駆動源とする2輪のAGVも併せて試作した(図1)。出力20Wのモーターを左右の車輪にそれぞれ装着し、遠隔地のサーバーから無線ネットワークを通じて制御コマンドを送信する。

図1 新開発の制御技術を適用したAGV
出力20Wのモーターを左右の車輪にそれぞれ装着している。
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 インテリジェントモータは、IoT(Internet of Things)時代を見据えて日本電産が開発したモーターで、もともと無線ネットワーク経由での制御を想定している。無線ネットワークの通信遅延のため従来は、制御コマンドの到着時刻が見込みよりも遅くなった場合に制御の結果が意図通りにならないことがあった。制御コマンドが遅れて到着する分だけモーターの状態も変化するためだ。

 新開発の制御技術では、通信遅延を事前に予測し、制御コマンドがモーターに到着する時刻や、そのときのモーターの状態(速度やトルクなど)も予測した上で、それに合わせた制御コマンドを送信する。

 通信遅延の予測技術は、NECが開発した。通信遅延は、通信回線が一時的に通信不能状態に陥ることで発生する。同社は、過去の通信遅延に関するデータ分析により、通信可能状態と通信不能状態の遷移確率(通信可能状態から通信不能状態に遷移する確率、および通信不能状態から通信可能状態に遷移する確率)が、ある有機化合物が取り得る2状態の遷移確率と類似していると発見した。

 具体的には、シクロヘキサン(C6H12)という有機化合物について、炭素原子同士の相対的な位置関係が異なる「椅子型立体配座」と「舟形立体配座」の遷移確率と類似している。低エネルギー状態の椅子型立体配座が通信可能状態、高エネルギー状態の舟形立体配座が通信不能状態に相当する。この分子の遷移に関する分析手法を応用すると、無線通信ネットワークにおける通信遅延の確率分布を予測できるという。

 日本電産とNECは現在、前出のAGV2台で長尺の板材とその上に積まれた“ワーク”を運搬する実証実験に取り組む(図2)。板材はAGVよりもはるかに長く、AGVに板材を把持する機構はない。単に板材の両端を2台のAGVで支えているだけである。2台のAGV(4個のモーター)を高精度に協調制御して、板材を落とさないようにバランスを取りながら目的地に向かわせる制御が今回の技術だけで可能とする。

図2 2台のAGVでワークを運搬
AGVに板材を把持する機構はなく、協調制御によって板材を落とさないように運搬する。
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 制御のためにAGVから取得しているデータは、モーターの「回転位置」「速度」「トルク」と、板材を支えている座面の角度(板材の動きを受けて垂直軸周りに回転する)の4種類である。ビジョンセンサーやSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)機能などを用いて自律的に移動するというような制御は行っていない。

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