距離画像を取得できるLiDAR(Light Detection and Ranging)。自動運転車やドローン、ロボットに不可欠になりつつある。産業技術総合研究所発のベンチャー企業のSteraVisionは、新しい原理を使ってメカレス化を実現した。新原理に基づくLiDARで、産業ロボットや自動運転の世界に変革をもたらしたいと意気込む同社CEOの上塚尚登氏に聞いた。

上塚 尚登氏(うえつか・ひさと)
東京工業大学卒業後に日立電線に入社。光通信デバイスの社内ベンチャーのヘッドとして売上高100億円の事業に。産業技術総合研究所を経て2016年12月にSteraVisionを設立。(写真:陶山 勉)

 私たちは、LiDARを2つの新しい技術を使って開発しています。1つは光学素子の採用で駆動部をなくしたメカレスの光線照射(ビームステアリング)技術。もう1つは、距離計測に一般的なToF(Time of Flight)を使わず、光学干渉を利用して長距離化する技術です。前者のメカレス化は、低コスト・小型・高信頼につながります。後者は、数百mの距離まで計測でき、長距離化のために採用されることが多いミリ波レーダーを不要にできるとみています。

 開発中の光線照射技術では、画面の端から順に距離を計測していく「走査」をしません。任意のポイントを任意の順で計測できます。例えば右上のポイントを計測して10~20µs後に中央のポイントを計測することが可能です。この結果、人間の眼のように、まずは全体を荒く捉えて、注目点を高精細に測距できます。既存の走査方式に基づくLiDARでは不可能な無駄のない計測ができます。

 このような測距ができるのは、液晶を応用した光学スイッチを使うためです。この光学スイッチは、入射光の方向を2方向のいずれかに屈折させることができます。どちらに曲げるかは電圧のかけ方で決められます。これを例えば8層重ねると256(=28)方向のうち、いずれかに設定できます。さらに、これとは屈折方向が90度異なる同様の8層を重ねることで、256×256の任意の方向に光を向けられます。

 測距には、ミリ波レーダーで採用されることが多いFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)を使います。FMCWは、周波数を線形に変化させた光を放射し、その反射光との干渉で生じるうなり(ビート)の周波数を計測します。反射光が届くときには、放射光の周波数がシフトしているために、両者の周波数の差の周波数をもつ、うなりが出来ます。この周波数は、反射までの時間、すなわち距離に対応します。これに対して光(近赤外光)を使って距離を計測する用途では、ToFを使うことが一般的です。ToFは送出したパルス光が対象物に反射して戻るまでの時間を計測して距離を算出します。

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