EVを普及させる要因は複数あるが、その中でもインパクトが大きいのが環境規制の強化である。EVは走行時にCO2を排出しないが、石油の採掘から発電・走行まで含めたWell to WheelでのCO2排出量は、エンジン車よりも多くなるのでは?との指摘もある。EVは本当に環境性能が良いのか探る。

 前回は、EV普及の要因として、様々な要素が広がっていることを示した。今回は、その中でも以前から電動化の要因とみられてきたCO2規制に関して、述べる。

 CO2規制の大きな根拠になっているのは、気候変動枠組条約締約国会議(COP)による各国ごとのCO2(正確にはGHG:温室効果ガス)排出量削減目標である。2015年末に制定されたCOP21(パリ協定)における各国の約束草案では、各国ごとに削減基準は異なるものの2025〜2030年に向けて大幅にCO2削減を目指すことになった(図1)。例えば日本の場合、2030年までに2013年比で26%のCO2削減目標を掲げた。

図1 各国のCO2(GHG)排出量削減目標(COP21)
2030年を目途とした目標値。日本は2030年までに2013年比で26%のCO2削減目標を掲げる。
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 各国におけるCO2排出量の内訳を比較すると、まず自動車を含む運輸部門の排出量の比率が、国によって大きく異なる(図2)。自家用車の世帯当たり普及率が相対的に高い先進国の方が全体のCO2排出量に占める運輸部門の比率が、高くなる傾向がある。その中で、日本は、元々軽自動車などの小型車が多いことに加え、ハイブリッド車(HEV)など低燃費化が進んでいることもあり、先進国の中では相対的に運輸部門の比率は低い。

図2 各国の部門別CO2排出量
各国のCO2排出量に占める運輸部門の比率は異なる。主要国ではフランスが最も大きい。
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 もう一つ特徴的なのは、各国によって発電部門からのCO2排出量比率が大きく異なる点である。例えば、新興国の中でも石炭火力発電が中心となっている中国、インドなどでは、特に発電部門からのCO2排出量の比率が大きい。また日本も、2015年時点で原子力発電がほぼ停止しており、火力発電に電源を依存する状態が続いており、先進国の中では発電部門からのCO2排出量比率が最も高い。一方、電源の大半を原子力に頼るフランスでは、発電部門からのCO2排出量は10%以下で、代わりに運輸部門からのCO2排出量の比率が、主要国の中で最大となっている。

 CO2排出量の議論をする際に、さらに重要な視点として、どの時点での排出量を議論するか、という視点である(図3)。走行時のCO2排出量(=燃費)を議論する上では、通常はTank to Wheelが議論となる。

図3 CO2排出量算出の考え方
Well to WheelではパワートレーンをEV化しても、CO2削減は電源構成の影響に強く依存するため、劇的な削減には発電側の再生可能エネルギーの増加が不可欠。
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 一方、パワートレーン別のCO2排出量を議論する際に、そのエネルギー源の製造(エンジン車であればガソリンや軽油の精製、EVであれば電気の発電)工程でのCO2排出量まで含む全体(Well to Wheel)で比較すべき、との指摘もみられる。

 特に、現在EVの導入を積極的に進めようとしている中国やインドなどは、発電部門でのCO2排出量が大きく、EVの導入がかえってCO2排出量を増やすのではないかとの指摘を受けたものとなっている。

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