新技術が台頭すると、既存の技術も大きく改善するのはよくあることだ。充電時間のさらなる短縮には不向きとされている液系Liイオン2次電池で、入出力密度が急速に向上してきた。その他の諸特性も改善しており、将来、全固体電池と市場で競合する可能性がある。ただし単なる競合技術では終わらず、将来の全固体電池に性能向上のヒントを与えそうだ。

 全固体電池の当初のアピールポイントである超急速充電を、電解液を用いたLiイオン2次電池でも実現しようという技術開発が活発になっている。EVメーカーにとって、既存技術の改善で超急速充電を実現できるのであれば、さまざまな点で未知数の部分が多い新技術を使うリスクを取る必要がなくなる。“競合技術”の出来は、全固体電池の将来も左右しそうだ。

 その競合技術筆頭と言えるのが、東芝が開発した「次世代SCiB」だ(図1)。SCiBはLiイオン2次電池の負極に、Liに対して電位の高いチタン酸リチウム(Li4Ti5O12:LTO)をあえて用いて、充放電サイクル寿命や安全性を高めることを優先させた電池である。電位が高いためLiが負極に析出せず、デンドライトによる短絡の可能性がない。こうした点が評価されて、2011年にホンダの「フィットEV」に搭載された。

デンドライト=金属イオンが負極上に樹木状に析出したもの。成長すると正極に達して短絡の原因になる。
図1 東芝が安全、長寿命かつ6分で充電可能な電池を実現
東芝の既存のLiイオン2次電池「SCiB」の次世代品のセルや特性を示した。セルは長辺が20cm弱、容量も49Ahと大型。6分で90%の超急速充電ができ、-10℃といった低温でも加温なしで、12分で90%充電できる。5000回の充放電サイクル後に90%の容量を維持することを確認。推定では同2万5000回で80%の容量を維持する。(写真、図:東芝)
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 一方で、負極の電位が高いと正極との電位差が小さくなり、放電電圧の低さ、エネルギー密度の低さにつながる。他のEV向け電池が負極に電位が低いグラファイトやSiを用いるなどでエネルギー密度を高める中、SCiBは市場で伸び悩んでいた。

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