日本独自の工夫も

シタラ興産はZRRの導入に当たって独自の工夫も施した。例えば、世界で初めてZRRを2台構成で導入した。1台数億円もするロボットを2台も併用して使うことにしたのだ(図4)。ZRRは現在までEU地域を中心に5カ国で導入されているが、1つの施設に2台を導入したのはシタラ興産が初めてという。

図4 識別センサ2個とロボットハンド4個で選別
ロボットハンドは2個1組になって稼働し、計5種類の廃棄物をピッキングし廃棄口に投入する。それぞれの廃棄物は下の区画に蓄積される。
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 2台のZRRを用いたのは、日本国内の産廃処理では素材ごとの選別の区分けが細かいことが多く、できる限り多くリサイクルに回そうとする慣習があるためだ。産廃の選別では仕分け切れなかったものは埋め立て処分に回るため、これをできるだけ減らすためである。海外では日本ほど多くの種類の素材を選別せず、埋め立てに回す比率が高いという。

 2台のZRRは独立して使うのではなく、同じライン上で直列構成で用いている。これにより、多数の種類の産廃選別に対応できるようにした。具体的には、最初の1台が木くずやがれき類の選別を担当する。2台目は、1台目よりも低い位置に設置してあり、両者のベルトコンベアには段差を設けた。1台目を通過した後の廃棄物をこの段差で落として衝撃を与え、重なっている廃棄物がベルトコンベア上で散らばるようにした。その後、2台目では廃プラスチックや石膏ボードなどの選別を行う。2台のZRRがあることで、センサ部も2個となるため、廃棄物の識別もより高精度かつもれなく行える。

 なお、ZRRでは1台のロボット内に2個のロボットハンドが備わっている。1個目のロボットハンドで把持に失敗した場合は、2個目のロボットハンドがその情報を受け取り、ピッキングする。ハンドが把持に成功したか失敗したかは、ハンドに備わっている空気圧センサで検知している。シタラ興産では2台のZRRを導入したため、合計4個のロボットハンドが選別を行っている。

18種類の廃棄物を追加学習

 シタラ興産は廃棄物の種類についても、日本ならではの材質を認識できるようにした。ZRRでは廃棄物の種類や形状の認識にディープラーニングを用いているため、新規の廃棄物であっても追加学習させることで選別できるようになる(図5)。

図5 世界中のロボットのデータをZenRobotics社のシステムが集約する
現在日本を含む5カ国でロボットが稼働しているが、国によって取り扱う廃棄物の素材が異なる。新規に識別したい素材があれば現場のベルトコンベア上に素材を流し、その画像データをZRBに送信する。ZenRobotics社がそれを基に学習させた結果をダウンロードするとその素材の識別が可能になる。 (右下の画像:サナース)
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 ZRRの認識システムは木くずやがれきといった一般的な廃棄物については、あらかじめ学習済みである。ZRRはこれまで4カ国で稼働しているため、そこでの学習結果も組み込まれていた。しかし、「日本の壁材に使われるコンクリートは海外製のものと材質が違うため、他国での学習データはうまく使えなかった」(シタラ興産)という。

 ZRRに新しい種類の廃棄物を認識させるには、その廃棄物を実際にベルトコンベア上に流すことで行う。操作パネル上で「学習する」というモードを選択し、覚えさせたい廃棄物1種類のみをベルトコンベアに繰り返し流す。

 ディープラーニングによる実際の学習自体は、ロボットのローカルではなくフィンランドのZenRobotics社側のシステム「ZenRobotics Brain」(ZRB)で行う。学習モード時に取得した廃棄物の画像の訓練データは、インターネット経由でこのZRBに送られる。そしてZRBでのディープラーニングによる学習結果(モデル)が、再びシタラ興産のZRRに送られ、新しい廃棄物を認識・選別できるようになる。シタラ興産の場合、来日したZenRobotics社のエンジニアの支援を受けながら、新たに18種類の廃棄物を学習させた。

 フィンランドのZRBには、世界中で稼働するロボットの学習データや利用時のデータが集まる。各国のロボットの学習結果は、ZRBを介して他のロボットでも利用できる。ZenRobotics社は、このZRBを通してセンサによる認識状況やロボットハンドの状態などを常時監視している。不具合や把持の失敗などの際、すぐに対処できるようにするためだ。シタラ興産は、このZRBの利用料として1時間当たり8ユーロを支払っているという。