トヨタ自動車は、キヤノンのMR(複合現実)システム「MREAL」を導入し、生産設備の検討に活用している。生産準備段階で作業のしやすさや負荷をバーチャルで評価し、働きやすい設備を構築するためだ。2017年5月30~31日に名古屋で開催される「Japan VR Summit NAGOYA 2017」では、同社エンジニアリングIT部 第3エンジニアリングシステム室主幹の榊原恒明氏が、活用の実態を紹介する。講演に先立ち、同氏に導入の狙いなどを聞いた。(聞き手は吉田 勝)

 3Dデータは、誰でも使えるわけではありません。トヨタには3DーCADやビューワの教育・実務利用を経て社内試験を受ける仕組みがありますが、試験に合格して一人前になるのは一部の設計者や専任者だけです。つまり、使いこなせるのは一部の人だけなのです。

 特に、製品開発などに比べて作業性検討のIT化は遅れていて、本来、3Dモデルを使って検討すべき人が使えていません。工場の作業者は3Dモデルを扱うことはありませんよね。しかし、実際に生産設備が使いにくくて苦労するのは現場にいる彼らです。そこで、生産準備において実際の作業者も3Dモデルを使って検討できるシステムとしてMREALを活用しています。

働き方を変えるツール

[画像のクリックで拡大表示]
トヨタ自動車 エンジニアリングIT部 第3エンジニアリングシステム室主幹の榊原恒明氏
 生産設備の検討には安全・確実に作業できることはもちろん、労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の仕組みが求められます。作業を分割した上でリスクを評価し、改善を重ねてリスクを低減していくわけです。その中で、作業負荷や姿勢の負荷を定量的に評価していますが、それでも疲労骨折やねんざといった労働疾病は起きています。MREALを使って作業負荷を事前に定量評価・改善できれば、最初からよりよい作業環境を構築できます。

 実際、現場では生産技術者がMRALで設備を評価した上で、さらに現場の実際の作業者の方にも利用してもらっています。実際に働く作業者の視点で評価することでより深いレビューが可能になります。そういう意味で、MRは現場の働き方改革にも寄与していると言えると思います。