「できるだけ頑張った」は認められない

 また、兵庫県宝塚市花屋敷で起きた土砂災害で住宅が被害にあい一家4人が死亡した事故について、大阪地裁・平成13年2月14日判決は、当該住宅の売主の責任について、以下のように判示しました。

 「本件斜面地は、切り土され人工的に形状が変化された50度を超える急斜面で、災害危険地域図では崖崩れ危険地域に指定され、本件建物と崖面の距離はわずか5m程度であったこと、本件斜面地において、少なくとも昭和58年及び平成5年に土砂崩れが起こり、殊に平成5年7月の崩落事故は、本件土地付近まで土砂が押し寄せ、高さ40cm、広さ100m2にわたり堆積するという規模の大きなものであったこと、平成6年6月には被告会社が…(行政庁より)本件斜面地の防災工事に関する勧告を受けたことからすれば、本件防災工事施工当時、被告会社の代表者…において、本件斜面地が崖崩れの危険の大きい箇所であることを認識し、崖崩れが発生した場合には、本件建物のみならず、本件建物に居住する住民の生命、身体、財産等が損害を被ることにつき、予見することは十分可能であったものと認められる。したがって、被告会社が本件土地・建物を他人に住居として売却するに当たっては、他人の生命、身体、財産等に被害を与えないよう、可能な限り本件斜面地の安全性について調査、研究を尽くした上、十分な防災工事を行うなどして安全性を確保するための措置を講じるべき義務がある」――。

 つまり、売主が売却に当たって十分な防災工事を行っていなかったことを理由として、土地の売主に対して、被害者の遺族に、逸失利益、慰謝料等を含む売価の数倍にも達する高額な損害賠償責任を命じました。

 なお、この裁判の事案では、売主もある程度のがけ崩れ防止工事を行っていましたが、裁判所が「本件売買契約締結当時、本件斜面地に崖崩れが発生することが具体的に予見可能であり、その場合には本件土地・建物に居住する住民の生命・身体等に損害が及ぶ大きな危険性が存することが客観的に認識可能であったのであるから、本件土地・建物を一般私人に住居として売却する以上は、経済的観点を理由として、安全性確保措置を講じる義務がないとは到底いえないことは明らかである」と断じていることは注目に値します。

 このように具体的危険性が認識されている場合は「できるだけ頑張った」「これ以上の対策は経済的に不能である」という反論は容易には認められません。「経済的に十分な安全性が確保できないなら販売してはならない」というのが裁判所の考えでしょう(図2)。

図2●豪雨によってが地盤が崩れたメガソーラー(本文の内容と直接、関係ありません)
(出所:日経BP)
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