本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第120巻第1183号(2017年6月)pp.10-13に掲載された「大型低温重力波望遠鏡KAGRAの測定システム」の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

 KAGRAはレーザー干渉計型重力波望遠鏡、すなわち宇宙から来た重力波と、レーザー干渉計内に滞在する光子の相互作⽤を検出する装置である。基線長は3kmあり、スーパーカミオカンデ・ニュートリノ検出器などがある岐阜県飛騨市神岡町池ノ山の山裾地下200m以深に建設中である。約200Mパーセク(約652万光年)離れた連星中性子星の合体で生じる重力波を年間数回検出するため、周波数20Hz以上で「光の雑音」にしか制限されない感度を目標とし、特に100Hz付近で最も良い感度を目指している。そのためには最適なデザインのレーザー干渉計とあらゆる雑音の除去が必要になる。

 目標感度の達成には、まずマイケルソン型レーザー干渉計の光学系の改良が必要だ。単純な同干渉計ではレーザー光が基線長(腕)を1往復するだけで、重力波の変化を充分積分できない(図1)。

図1 最も単純なマイケルソン型レーザー干渉計
図1 最も単純なマイケルソン型レーザー干渉計
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 そこでKAGRAでは、中心のビームスプリッター(BS)に近い所にニア鏡を追加し、レーザー光を約500回往復させ光路長を稼ぐ。つまり腕部分でFinesse(フィネス)が1550程度の「Fabry-Perot共振器」を構成する。

 しかし、これだけでは高周波側のShot雑音レベル、すなわち光子のバラつきによって生じるノイズが大きく目標感度を得られない。目標に合うようShot雑音を抑えるにはレーザーの出力を高めればよいが、連続波レーザー光源は、最先端技術であっても周波数、強度、発振横モードのすべてが安定して得られる最大出力レベルには限界がある。そこで2つの工夫で100倍程度の感度向上を図る。

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