本来とは異なるもう1つの目的をどう用意するか。それが「仕掛学」の肝だ――。

 さまざまなヘルスケアサービスが試行錯誤を続けている中、仕掛学という学問から考えると、健康に対してはどうアプローチすべきなのか。仕掛学を研究する大阪大学大学院経済学研究科 教授の松村真宏氏は、「第11回 LINK-J ネットワーキング・ナイト WITH SUPPORTERS 仕掛学×ICT×ヘルスケア ユーザーが使い続ける ヘルスケアサービスの実践」(2018年2月15日、主催:LINK-J)に登壇し、「仕掛学から考える健康経営」と題して語った。

大阪大学大学院経済学研究科 教授の松村真宏氏
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従来のアプローチが効かない時の打開策に

 最近はマラソン大会が人気で、2018年2月25日に開催された「東京マラソン2018」にも多くのランナーが参加した。当選倍率は非常に高くなっており、応募してもなかなか当選しない状況となっている。こうした状況を踏まえると、「多くの人の意識が健康や運動に意識が向いている」と考えられなくもない。

 しかし松村氏は、「私はそうは思わない」と語る。こうしたイベントに参加するのは、もともと健康な人や運動をしている人であり、健康に問題がある人や普段から運動しない人は全く反応しないからだ。その点が「非常に問題だ」と松村氏は強調する。

 運動したり食生活を変えたりするなど、健康のための行動変容を起こすためには、その人に何らかの働きかけをする必要がある。これまでの多くのアプローチといえば、「このままでは病気になりますよ」「寿命が縮まりますよ」と言って指導し、行動を改めてもらうことだ。しかし、「言っただけで行動を変えてくれる人はもとから健康に関心のある人。問題なのは、いくら言っても行動が変わらない人だ」と松村氏は指摘する。「言っても変わらない人をどうやって変えていくかがポイントとなる」(同氏)。

 行動変容には「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」という5つのステージがあるという。無関心期からスタートし、まずは関心を持ってもらってもらい、準備して実際に行動してもらったら、最後にそれを習慣にしてもらうというのが大まかな流れだが、実際はそう単純ではない。

 最大の問題は、「無関心期と関心期に大きなギャップがある」(松村氏)こと。無関心な人に関心を持ってもらうことが一番難しく、ときには正論を言うと反感を持たれ、逆に意固地になってしまうケースもあるという。従来のアプローチが効かないとき、それを打開できる可能性を秘めているのが「仕掛学」だとい同氏は語る。