「AIとブロックチェーンで医療に衝撃を」

「問診ボット」「次世代カルテ」「AIクリニック」を手掛けるNAMが創業

2017/11/29 11:00
大下 淳一=日経デジタルヘルス

 「最先端の技術で医療に衝撃を」――。そんなミッションを掲げ、人工知能(AI)やブロックチェーンの医療応用を目指すベンチャー企業、NAMが2017年10月に事業を開始した。「AIを利用した問診ボット」「機械学習を利用した疾患予測モデル」「深層学習とブロックチェーンを使った次世代カルテシステム」などのサービスを、2018年初頭から矢継ぎ早に投入。医療AIサービスを提供するクリニックも立ち上げる。

 NAMは2017年11月28日に東京都内で記者発表会を開催。独自の仮想通貨「NAMコイン」を使ったICO(イニシャル・コイン・オファリング:仮想通貨技術を使った資金調達)を同年12月24日から実施し、100億円の調達を目指すと発表した。調達した資金は、医療AIサービスの研究開発に充てる。

NAM代表取締役社長の中野哲平氏
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2020年までに4つのサービスを開発、市場投入

 NAM(Nakano AI Medical)を立ち上げた同社代表取締役社長の中野哲平氏は1992年生まれの25歳。2017年3月に、慶応義塾大学医学部を卒業したばかりだ。

 中野氏は在学中からAIやその医療応用に関する研究に取り組み、2016年には「日本の医療を救う電子カルテ検索システムの開発」をテーマとする研究が、経済産業省所管の情報処理推進機構(IPA)の未踏IT人材発掘・育成事業に採択された。今回、この研究プロジェクトをベースにNAMを創業し、地域包括ケアシステムへの貢献をうたう「プロジェクトNAM」を立ち上げた。NAMは医療系のバックグラウンドを持つ4人を含む、社員15人のエンジニア集団である。

 NAMが目指すのは、現在の医療が抱える課題をAIやブロックチェーンなどのテクノロジーを活用して解決することだと中野氏は説明する。同氏が指摘する医療の課題とは、(1)患者の治療結果を医師が十分にフォローできていない、(2)電子カルテの普及率が50%に満たず、患者の医療情報が十分に共有されていない、(3)新しい薬や検査技術の承認が海外に比べて大きく後れている、の大きく3つ。これらの課題に応えるために、2020年までに4つのサービスを開発し、市場投入する計画だ。

4つのサービスとは…

 第1に、AIを利用した問診ボット「ドクターQ」。普段の患者の状態や薬の副作用の出方などをAIがチャット形式で収集し、医師にその結果を伝えることで来院の必要などを的確に判断できるようにする。2018年1月の提供開始を計画し、インドネシアなど海外での提供も予定している。

 第2に、機械学習を利用した疾患予測モデル「NAMインスペクション」。高血圧や糖尿病などの慢性疾患を含む10種類の病気に対する検査キットを併せて開発する。2018年3月のサービス開始を予定している。

 第3に、AIが推薦する健康食品「NAMヘルス」。2018年5月にサービスを開始する予定で、ゲノム検査と健康食品を絡めたサービスを開発し、海外にも展開する。

「AIクリニック」を開業
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 第4に、深層学習とブロックチェーンを使った次世代カルテシステム「NAMカルテ」。AIによるサマリー機能などを備えた、使いやすく高機能な電子カルテを無料で提供する考えで、2019年1月にサービスを開始予定。

 これらのサービスは、まずは薬機法(医薬品医療機器等法)の対象にならない範囲で提供する考え。今後、用途によっては薬事承認の申請も検討するという。さらに、これらNAMが提供するサービスを受けられる医療機関として、外部組織と連携して2018年3月に医療法人「NAM AIクリニック」を東京・銀座に開業する。次世代シーケンサーによるゲノム検査なども提供する考えで、ゆくゆくは同クリニックを全国に100施設展開することを目指す。

 仮想通貨を用いた資金調達は、2017年12月24日から2018年1月31日に実施。NAMコインの購入者に仮想通貨「イーサリアム」をNAMのウォレット(電子財布)に送金してもらうことで資金を調達する。NAMコインは、NAMが開発した製品の購入やサービスの利用にも使うことができる。