メガソーラービジネス

「5つの雑草対策を組みわせる」、緑地雑草科学研究所・理事に聞く(後半)

メガソーラービジネス・インタビュー

2016/07/28 00:00
金子憲治=日経BPクリーンテック研究所

緑地雑草科学研究所(福井県鯖江市)は、雑草問題の解決のために専門知識や情報提供、対策の提案などを行っている特定NPO(非営利活動法人)。同研究所で理事を務める伊藤幹二氏(マイクロフォレスト リサーチ代表)と伊藤操子氏(京都大学名誉教授)に、メガソーラーにおける雑草対策のあり方などについて聞いた。前半のテーマにとなったメガソーラーの雑草リスクに続き、後半では、具体的な対策手法について聞いた。

――雑草の管理には、具体的にどのような手法がありますか。

伊藤(幹) 代表的な手法は5つです。(1)草刈機による除草(機械除草)、(2)化学薬剤(除草剤)の散布、(3)防草シートの敷設、(4)シバ、クローバーなどの被覆植物の植栽、そして、(5)チップなど植物性資材の敷設――です(図1~5)。

図1●草刈機による除草風景(出所:日経BP)
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図2●除草剤の散布で枯死した草(出所:日経BP)
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図3●防草シートによる対策(出所:日経BP)
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図4●クローバーによる防草対策(出所:日経BP)
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図5●木質チップの敷設による防草対策(出所:日経BP)
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 このほか、防草シートの代わりに、上層を砕石(クラッシャーラン)で覆ってしまう方法や、雑草の侵入を減らす予防対策として、防止壁や防風林を設置する方法もあります。

 雑草対策は、まず、生えた雑草を機械で刈るのか、化学薬剤やシートなどで生えないようにするのかで考え方が分かれます。メガソーラーの場合、パネルに影を作る背丈の高い草が問題にされるので、表土を背丈の低い短草植物で覆う手法も多く採用されます。

 実際には、これらの手法やツールを組み合わせることになります。例えば、コストを考えれば、サイト全体に防草シートを敷き詰めるわけにはいきません。

ヤギ・ヒツジの食べない草も多い

――ヤギやヒツジなどをサイト内に放して草を食べさせる「家畜除草」の試みもあります。

伊藤(幹) 家畜による除草は、生えた雑草を除く、機械除草の代替と言えます。ただ、家畜動物は、雑草のすべてを食べるわけではありません。クズはよく食べますが、セイタカアワダチソウやヨモギ、ギシギシは食べません。繁殖力の強い問題雑草を好まない傾向があります。

――周辺環境に配慮して、「除草剤を使いたくない」というメガソーラー事業者が目立ちます。

緑地雑草科学研究所の伊藤幹二・理事(マイクロフォレスト リサーチ代表)(出所:日経BP)

伊藤(幹) 化学薬剤にもさまざまなものがあり、専門的な知識に基づいて使用すれば問題ありません。むしろ、機械による除草は、花粉や種子が飛散するなど、周辺環境への負荷を高める恐れもありますし、刈り取った草がごみになります。化学薬剤を適切に活用することなどで、雑草の発生そのものを抑えていくことが好ましいと考えています。

 新たに土地を造成して開発した場合、当初の設計段階に雑草対策を組み込み、適切な薬剤などで、土壌中の雑草バイオマスをクリーンナップしておけば、5年程度は、雑草の発生をかなり抑えられます。

 こうした話をすると、では「良い除草剤を教えてください」と、聞きたがる人が多いのですが、これまで説明したように事前に調査したうえで、雑草対策を構築していく中で、適切な薬剤を決めていく必要があります。

除草剤は、「草を枯らすため」に使わない

――雑草が繁茂してから、手を打ったのは遅いということですね。

伊藤(幹) 日本では、除草剤を「機械除草の代替」として、すでに成長した雑草を枯らすため活用する例が多いのですが、ただ、地上部分だけを枯らしても、地下茎まで完全に枯れなければ、また来年、同じ草が生えてきます。ホームセンターで販売しているような汎用的な除草剤には、こうしたタイプが多いのが実態です。

図6●メガソーラー建設地に繁茂するセイタカアワダチソウ(出所:日経BP)
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 化学会社は、毎年、除草剤が売れるので良いのですが、これでは草刈機を使わないだけで、毎年、ランニングコストはかかります。

 適切な除草剤を、適切な時期に使えば、地下茎の成長点まで枯らすことができます。セイタカアワダチソウのような非常に繁殖力のあるような雑草でも、比較的容易に発生を抑えられます(図6)。

――雑草のリスク評価で、挙げられていた、近隣住民からのクレームのリスクに備えるにはどんな手法が考えられますか。

伊藤(幹) すでに述べましたが、例えば、雑草対策だけを考えれば、コンクリートで舗装すればほぼ完全ですが、周囲への熱汚染の影響が大きくなりますし、表面流水が増えます。そもそも施工コストが高くなります。

 メガソーラーには、雨樋がないので、パネルに降った雨は、必ず地表を流れます。表面流水の外部への影響は、クレームリスクという点で大きな課題です。こうした観点から、シバやクローバーを植栽したり、植物性の資材で地表上層を覆うなどの手法が、ある程度、保水力を維持した雑草対策として有効です。

 ただ、シバやクローバーだけで、背の高い雑草を完全に防げない場合も多いので、化学薬剤や防草シートなどを最適に組み合わせ、潜在的なクレームコストも加味したうえで、費用対効果に優れた対策計画を立てることが重要です。

地下部分は地上部の数倍

――そもそも、「雑草」とは、どんな植物なのですか?

伊藤(幹) 雑草にはさまざまな科に属す植物が含まれますが、あえて定義すれば、「人為的な表土の攪乱(かくらん)によって発生する植物群」と言えます。そして、その発生によって人の生産活動に「経済的な損失」を与える草種です。

 野草との違いはそこにあり、農業が最たるものですが、メガソーラー開発でもそうです。人間が地表を攪乱すれば、必ずそこに生えてきて、経済活動を妨げます。つまり、土地環境の変化によって、「増える」、「広がる」、「変わる」という面があります。

 特徴的なのは、人による防除作業に適応して、定着し、存続し続けることです。除草しても除草しても、また生えてくるのです。そうなるのは、地下に地上部の数倍の栄養繁殖器官を形成しているからです。

――空き地を放っておくと、セイタカアワダチソウのような背の高い草が繁茂します。

伊藤(操) 人が地表を攪乱すると、まずエノコログサやイヌタデのような1年草が生え、徐々にヒメジョオンやブタクサなどの1~2年草が優勢になります。

 農地の場合、強度に栽培管理されているため、これ以上、遷移しませんが、非農地では、その後、セイタカアワダチソウやススキ、ヨモギなどの多年草が優先になります。こうした多年生の草本は、地下で広がる雑草種で、それが農地以外での雑草管理を難しくしています(図7)。

図7●造成後の裸地や畑を放任した後の植生の変化(出所:「伊藤操子・森田亜紀著,地下で拡がる多年生雑草たち.1999. ダウケミカル日本(株)発行」から抜粋)
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「刈れば刈るほど増える」

――地下にはどのくらいの根が張っているものなのですか。

伊藤(操) 多年草の地下部の生長量は、地上部を上回っており、スギナの場合、重量比で約5倍、ヨモギで約3倍、セイタカアワダチソウやヨメナ、チガヤで約2倍に達していたという調査結果もあります(図8)。

図8●1シーズンにおける地下部の成長量の例(出所:「伊藤操子・森田亜紀著,地下で拡がる多年生雑草たち.1999. ダウケミカル日本(株)発行」から抜粋)
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 セイタカアワダチソウ、セイバンモロコシなどは、地上の葉や茎を機械で刈り取ると、生き残るために地下茎がいっそう成長します。「刈っても、刈っても生えてくる」と言いますが、それは当然で、増えるような管理をしているからなのです。

 ただ、セイタカアワダチソウの根茎は地下10㎝程度、ヨモギ、ヨメナも15cm程度と地上部の高さに比べると、意外に浅いことも分かっています。そのほかの根茎系の雑草でも地下部の深さは20~50cmまでです。根茎まで枯らす除草剤を適切な時期に散布すれば5年程度は、生長を抑えることは容易です。

――新たに造成した用地などにもあっという間に雑草が生えてきます。

伊藤(幹) 種などの雑草の繁殖体は、風や表面流水や土壌、昆虫や鳥などの生物によって移動します。これらは産業活動によることも多く、例えば、ツル性のクズは元々里山で栽培されていましたが、土地開発に伴う埋め立てや盛土用の土の移動とともに、里山から市街の造成地などに急速に広がりました。

温暖化で雑草対策が困難化

――気候変動の影響で、雑草の植生も変化しているのでしょうか

伊藤(幹) 気候変動の原因であるCO2濃度の上昇、その結果である気温上昇は、いずれも雑草にとっても生育しやすい条件になっています。加えて、市街地では、ヒートアイランドによって、さらに温度が上がっています。

 都市や市街地で、クズやヨモギ、チガヤなどが異常ともいえる生長量を示していることや、本来、ロゼット(根生葉)で越年するはずのセイタカアワダチソウやヨモギがシュート(茎と葉)を伸ばしながら越年したり、メヒシバ、オヒシバ、エノコログサなどの夏生一年草が冬季に入っても枯死しないなど、日常的に観察できます。また、道路や鉄道などの法面に雑草や木が増加していることも顕著です。

 これらの現象は、都市環境の温暖化による影響とも考えられます。こうした変化は、雑草管理をいっそう困難にしており、管理コストの上昇につながります。

――NPO法人の緑地雑草科学研究所を設立したのは、なぜですか

緑地雑草科学研究所の伊藤操子・理事(京都大学名誉教授)(出所:日経BP)

伊藤(操) 日本の雑草防除研究は、40年ほど前から始まりました。当時、研究に求められたのは農地の除草であり、国が主導して水田や畑、果樹園など、作物ごとに専門家が除草について研究し、詳細なマニュアルを作ってきました。その結果、農家は除草作業の負担が大幅に軽減し、耕作面積を広げられました。

 除草の研究分野が細分化したことで、除草ノウハウ全体を理解した人材が減り、農業以外の土地利用における雑草の管理技術が置き去りにされました。日本の大学では雑草をテーマにした研究者が少ない面もあります。

 一方で、農地以外でも雑草問題が深刻化してきました。そこで、2002年に農業外の雑草の問題に対応し、情報提供などを行うNPOを作ったのです。

 農地では作物によって土壌環境が画一化してくるので、生えてくる雑草も特定され、対策も決まってきます。一方で、農地以外の用地、例えば、公園や道路、そしてメガソーラーなどの環境は、地域によって異なりますし、雑草の植生も変化します。そのため非農地における雑草対策は、複雑になりがちです。

 ただ、雑草を防除するツール自体は、さまざまな手法が研究され、確立されています。農業以外の分野では、そうしたツールをいかに最適に組み合わせていくかが課題になります。メガソーラーに関しても、最適な管理手法が確立できるはずです。