2017年11月4日、ラグビー日本代表が世界の強豪であるオーストラリア代表を日産スタジアム(横浜市)に迎えた“歴史的”な一戦。そこで、とある実証実験が行われていたことに気づいた人は少ないだろう。キヤノンが開発した「自由視点映像生成システム」である。

 同システムは、3D空間で“仮想カメラ”を動かし、自分があたかもスタジアム内を自由に飛び回ったり、フィールド内に入り込んで選手と同じ場を疑似体験できるようにしたりする。かつてないスポーツ観戦の体験を提供するのが狙いだ。

キヤノンが開発した「自由視点映像生成システム」のデモ画面(図:キヤノン)
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 キヤノンが開発したシステムは、スタジアムのスタンド部分にネットワークに対応したビデオカメラを30台(1セット)もしくは60台、フィールドを取り囲むように配置。撮影した映像から選手の部分を抜き出して3Dモデルを作成し、そこにCGで背景を合成。その映像から「仮想カメラ」によるハイライトシーンを編集する。

スタジアムに30台もしくは60台の4Kビデオカメラを設置(写真:キヤノン)
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 ビデオカメラは4K対応で、ネットワークで接続された制御装置から、録画のオン・オフや明るさの調整がリモコン操作でできる。カメラの台数は多いものの、少人数で運営できるという。

 生成した自由視点映像は、タブレット上でユーザーが好みの視点で楽しんだり、VR(仮想現実)対応HMD(ヘッドマウントディスプレー)で臨場感や没入感を味わったりできる。さらに、通常の2D映像にはない3Dの情報を持つため、チームの強化や戦術分析などに役立てられるという。

40秒映像の制作に1日

 キヤノンが自由視点映像生成システムの対象としている競技はサッカーとラグビー。これまでにJリーグの協力によってサッカーで4回、そしてラグビーは先日のオーストラリア戦を含めて2回実験している。

 「サッカーの場合はハイライトシーンはゴールに近い部分で起きる。これに対してラグビーはフィールドのより広範囲な部分で起きる」(キヤノン デジタルシステム開発本部上席の伊達厚氏)。設置するカメラの台数や場所、カメラの向きなどにノウハウがあるという。

自由視点映像を編集しているところ(写真:キヤノン)
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 課題は、映像編集時間の短縮。現状では、40秒の映像を作成するのに約1日かかる。同社によると、現在は実証実験段階であり、ビジネス計画については未定という。

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