ソニーが発売した新型「aibo」は、同社のAIロボティクスビジネスグループの第一弾の製品である。AIとロボットの技術を生かして、ソニーはどのような製品領域を作り上げようとしているのか。aibo投入の狙いや構成技術、その先に広がるAIロボティクス事業の展望などを、同グループを率いる川西氏に聞いた。(聞き手=今井拓司、根津禎、進藤智則)

――aiboを手掛けるAIビジネスロボティクスグループは、どのようなビジョンを掲げて発足し、どのような経緯でaiboの製品化に至ったんでしょうか。

 AIロボティクスビジネスグループは2016年7月に発足しました。その時に、AIとロボティクスの技術を生かして、人に寄り添い、人の生活を豊かにするような商品やサービスを作っていこうというビジョンを掲げました。最初はコンシューマー向けですが、B2B向けも含めた形です。可能性としては、製造設備や流通などを対象にすることもあると思います。

 aiboはホームエンターテイメントロボットにしましたが、例えばもっと人をアシストするもの、目的を明確にしてより特化したB2Bの製品も考えらえますし、そういうものもチャレンジしていきたいと思っています。

――現在もいろいろなプロジェクトが動いていて、おいおい登場してくると。

ソニー 執行役員 ビジネスエグゼクティブ 事業開発プラットフォーム AIロボティクスビジネスグループ 部門長の川西 泉氏
(写真:加藤 康)

 そうですね。世の中に出るものと出ないものがあると思いますが。

――その中で、aiboのプロジェクトの位置付けは。2016年11月発売のコミュニケーションロボット「Xperia Hello!」などもありますが(関連記事)。

 aiboは(AIロボティクスグループの)第1弾のプロジェクトとしての商品化を前提にスタートしましたので、一番大きなプロジェクトです。「犬型」ということを明確にして、人がとっつきやすい形にしました。ロボットなので自ら人に近づく、そこが決定的な要素だと思うんですよね。いわゆるAIスピーカーや、Xperia Hello!は動かずに定点で見守る形です。

 Xperia Hello!も私の管轄ですが、ソニーモバイルコミュニケーションズの商品の1つとして出しています。家の中で家族が集まりやすい場所に置いて、家族間のコミュニケーションをもっと発展できるようなものと考えています。逆にaiboは言葉を話しませんので。

 ロボットの市場そのものはまだ確立されていないので、色々なトライアルは今後もまだやると思います。その中でもっと違う可能性もあるかもしれないです。

――ソニーの場合、AIロボティクスの用途は、やはりエンターテインメントの要素が強くなると思いますが、実用的なものと比べると、ユーザーがどれだけ受け入れてくれるのかが読みにくいです。以前のAIBOが生産中止になった経緯もあります。今回のaiboの勝算は、どういうところにあるんでしょうか。

 もちろん、チャレンジはあります。ただ、AIスピーカーのような目的を持ったものに対するユーザーの期待は「機能」だと思うんですよ。例えば受け答えができて、何か頼んだらそれをやってくれる、という目的がいくつかあるじゃないですか。それに対する期待を持って買う商品なわけです。

 でも、ペットの犬を飼う時には、その犬が何をしてくれるかとか考えないですよね。犬が欲しいかどうかで決まります。つまり感性の価値です。そちら側に比重を置いた商品こそ、本来ソニーがやるべきところだと思います。

 もちろん機能的な面での良さはあります。でも、「これが欲しい」って思えるものを作ることが、やっぱりソニーのDNAです。今回のaiboはそこに振ったものです。

――aiboの進化の方向性は、本当の犬に近づけるということですか。

 いや、犬のシミュレーターを作ったんじゃないんです。これは社内でずいぶん議論しました。やっぱり犬好きの人やペット好きの人からは、「犬がこうだからこうでしょ」という意見が出たりしますから。でも、ことごとく反論したんです。それが目的じゃないんだと。

 犬のシミュレーターを作るのなら、犬を飼えばいいんです。そうじゃなくて、やっぱり人にどれだけ近づけるかとか、癒しを与えられるかに力を入れたい。たまたまそれが犬と同じような動作をして、それがとっつきやすいと思えば、そうすればいいのであって。

――ただ、今回は明確に「犬型」と説明されています。犬との違い、犬よりも癒しを感じられる部分はどこでしょうか。

 犬との違いは、知的な要素を入れていることですね。物理的な面では、犬の方がもっと速く動けるし、鼻も効く。でも知的な部分でいうと、aiboのAIは、犬と比べて学習の能力が高い。今回のaiboはクラウドにつながっているので、人よりも賢い部分がある。しかもある意味、無限に成長できる。

――一見、犬のようですが、一緒に過ごしているうちに、知的な部分がかなり感じられるようになっていくと。

 そうですね。それをどう表現するかは、これから考えていかないといけないですが。仕草で表現することもできるし、目の表現もあるし。それと同時に、インターネットの情報的な与え方、仕草ではなくてデジタル処理された情報をユーザーに与えることもできる。例えばユーザーが持っているスマートフォン(スマホ)に映像を出すとか。

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