今から3年以上も前の2014年12月に、まだ招待制で限定販売されていた米Amazon.com社のAIスピーカー「Amazon Echo」を入手して、米国のオフィスで調査。以来、AIスピーカー市場をウオッチしてきたのが調査会社、野村総合研究所IT基盤イノベーション本部ビジネスIT推進部の鷺森崇氏である。同氏にAIスピーカーの製品としてのポテンシャルなどを聞いた。

――AIスピーカーは、米国では2017年末ホリデーシーズンの大ヒット商品の一つになったと聞いています。

野村総合研究所IT基盤イノベーション本部ビジネスIT推進部の鷺森崇氏
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鷺森 販売台数についてはいろいろな推計があって何とも言えませんが、米国ではAIスピーカーの累計販売台数が2016年末時点で1100万台を超えたと言われています。さらに2017年末のホリデーシーズンもかなり売れたので、累計で数千万台には達していると考えています。

 AIスピーカーのユーザー層は若い人が中心で、利用は音楽再生にかなり寄っています。米国では音楽ストリーミングが普及しており、AIスピーカーが受け入れられる土壌があります。ワイヤレススピーカーと同価格帯で買いやすく、音声操作に未来感があるのも人気の理由です。一方、日本の音楽市場はいまだにパッケージ比率が高く、AIスピーカーはそれほど急速には広がらないと考えています。

――米国では、音楽以外にどのような用途に使われているのでしょうか。

鷺森 音声で操作する「音声インターフェース(IF)」の使われ方は限定的です。実際、2017年4月の米comScore社の調査によると、よく使われる用途は音楽再生以外は、一般的な情報検索(QA)や天気予報です。つまり、音声IFの使用で“無理を感じさせない”機能です。個人的には、音声IFのみでの利用は今後さほど広がらないと見ています。

 一方で、AIスピーカーというデバイスの多様化が始まっています。一つのトレンドはディスプレーの搭載です。例えばAmazon.com社は、7型ディスプレーを搭載したAIスピーカー「Echo Show」を2017年5月に米国で発売しました。商品検索の結果を表示する際、音声だけだと情報を伝えるのは困難ですが、ディスプレーがあれば一発です。情報伝達で視覚に頼る部分は大きいのです。

 AIスピーカーをテレビと連携させて、動画ストリーミングサービスを音声で操作するという使い方にも可能性を感じます。実際、Amazon Echoは自社の動画ストリーミング再生機器「Fire TV」などと連携できます。

 この使い方はAIスピーカーを介するものですが、今後はテレビ自体がマイクを搭載し、AIの音声IFを内蔵していくと思います。そうなると、テレビが動画を観るだけの機器だけでなくさまざまな用途に使えるようになり、これまでと違った存在感を持つようになります。こうした構想自体は、かつて「スマートテレビ」が注目を集めたときもありましたが、当時はコンテンツが限定されていました。しかし、今ではAmazon.com社や米Google社などのプラットフォーマーがAIスピーカーという市場を形成したことで、テレビと連携することによる世界の広がりが見えてきました。

 また、AIを使った音声IFの内蔵は、テレビだけでなくクルマでも進んでいくと思います。

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