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スポーツIT革命の衝撃

ベンチャー発「電子チケット」、イベントで採用続々のワケ

2018/01/15 05:00

内田 泰

 「電子チケット後進国」と言われる日本で、2017年6月の設立ながらスポーツイベントでの採用を急速に増やしているベンチャー企業がある。電子チケット発券サービス「Quick Ticket」を展開するplaygroundである。

 プロ野球の西武ライオンズは、Quick Ticketを2017年9月の数試合で試験導入し、2018年シーズンから本格導入する。そのほか、11月のラグビー日本代表とオーストラリア代表戦でも採用されたほか、バレーボールのVリーグやラグビーのトップリーグなどが採用を決めた。これら以外でも導入の引き合いが多いという。

 すでに米国では、エンターテインメントのみならずスポーツイベントでも電子チケットが主流になっている。チケットの予約・発券を代行するプレイガイドとして力を持つ、米Ticketmaster社が音頭を取って電子化を進めたため、4大スポーツではMLBで90%以上、NFL、NBA、NHLでそれぞれ70~80%に達しているという。

 対して、日本では電子チケットに対するニーズは高いものの独自の商習慣やシステム開発コスト、端末設置など現場の負荷が高いことなどから、導入のスピードは遅い。さらに、複数の異なる電子チケット規格が乱立し、普及の鍵である「共通化」が実現していない。こうした課題の多くをクリアするのがQuick Ticketである。

QRコードは偽造が問題

スマホの画面にチケットを表示し、イベント会場ではんこのような物理スタンプで“もぎる”。スタンプが押されると画面に「使用済み」「USED」などと表示される(図:playground)
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 Quick Ticketの特徴を端的に言うと、スマートフォン(スマホ)を持っていれば紙より手軽にチケットを受け取れる上、スタジアムなど主催者側での導入が簡単で、しかも偽造ができない点にある*1

*1 スマホを持っていない場合、人数分のチケットを代表者のスマホで受け取って表示できる

 興行主やプレイガイドのWebサイトでQuick Ticket対応のチケットを購入すると、スマホにLINEかFacebook Messengerで「チケットURL」(メールで送付する選択肢もある)が届く。これをクリックすると画面にチケットが表示され、イベント会場ではんこのような「物理スタンプ」(電池不要)でスマホ画面を突いて“もぎる”(入場券の半券をもぎ取ること)。スタンプが押されると画面に「使用済み」「USED」などと表示される。

 紙のチケットの場合は、購入したらチケットを郵送してもらうか、コンビニなどの店頭に受け取りに行ったりする必要がある。ユーザーにとってひと手間かかるし、興行主にとっては「偽造」「不正転売」という大きな問題がある。

 そこで興行主は電子チケットの導入に前向きだが、いくつかの課題がある。例えば認証にQRコードやNFC、生体認証などを使う場合、イベント会場ではそれらを読み取るゲート、もしくは端末などが必要になる。相応の初期投資が不可欠だ。さらにプレイガイドによって異なる技術を使った複数規格の電子チケットを販売するケースもあり、その場合は会場で複数の方式に対応しなくてはならず、コスト増につながる。また、現時点で最も利用されている通常のQRコードには、スクリーンショットで簡単に偽造できてしまう弱点がある。

興行主やプレイガイドは「タダで導入」

playground 執行役員 事業推進担当の河野貴裕氏
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 一方、Quick Ticketではスマホで電子チケットをすぐに受け取れる上、会場側では物理スタンプを用意するだけでいい。アプリ型の電子チケットの場合は、初回にスマホにアプリをダウンロードして会員登録をする手間がかかるが、こうした面倒な作業も不要だ。

 技術的な仕組みはこうだ。iOSやAndroidなどスマホのOS(基本ソフト)は、画面に同時にタッチされた5~7点の座標を同時に検出する機能を持つ。Quick Ticketでは電子チケットページに3~5点同時にタッチされた座標情報の“鍵”を埋め込んでおき、会場で押された物理スタンプのパターンと照合して有効性を判定する。Quick Ticketはブラウザー上で動作するアプリなので、たとえチケットをスクリーンショットでコピーしても、鍵の情報はコピーされない。「通常のQRコードと異なり本物しかもぎれず、偽造できない」(playground 執行役員 事業推進担当の河野貴裕氏)としている。

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