本コラムは、数々のイノベーションで広く知られる3Mグループにおいて、大久保孝俊氏が体得したイノベーション創出のためのマネジメント手法を具体的に紹介します。大久保氏は、自身で幾つものイノベーションを実現しただけでなく、マネジャーとして多くの部下のイノベーションを成功に導きました。

前回:誤解するな、イノベーションは技術革新だけではない

知恵を価値とお金に変える

 本連載では、実際の事業を担う立場から、より実践的にイノベーションを定義したい。

 まず、新製品の開発や新規事業の立ち上げに直接取り組んでいる担当者に対しては、「顧客の満足を得るために新しいことを実行すること」をイノベーションと定義する。「顧客の満足を得る」とは、「顧客の問題を解決すること」あるいは「顧客にとっての価値の創造に貢献すること」だ。「新しいこと」は、新技術の開発とは限らない。製造業である以上、新技術を取り入れた新製品や生産技術が価値創造の中心となることが多いが、そこだけに限定してはならない。販売や調達、デザイン、ビジネスモデルなども対象になる。さらに、こうした領域を見渡して全体最適を実現することも重要となる。

図3 「研究→知識→イノベーション→お金」循環プロセス
筆者の考える、イノベーションを基本にした事業の成長モデル。「研究→知識→イノベーション→お金」を循環させることで事業を持続的に成長させる。

 新技術の研究開発に成功して特許を取得した人は、この時点でイノベーションを達成したと思うことが多い。特許取得によって、昇給あるいは昇進することもあるだろう。しかし、まだ、顧客の満足は得られていない。その時点ではイノベーションは実現できていないのである。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)登録で6月末まで無料!