本コラムは、数々のイノベーションで広く知られる3Mグループにおいて、大久保孝俊氏が体得したイノベーション創出のためのマネジメント手法を具体的に紹介します。大久保氏は、自身で幾つものイノベーションを実現しただけでなく、マネジャーとして多くの部下のイノベーションを成功に導きました。

前回:これがイノベーションを導く設計図

 イノベーションの設計図の詳細に入る前に、2つの大切な前提について共通認識を得たい。「イノベーションとは何か」(今回から2回)についてと、「イノベーションにおけるマネジメント」(その次)について、である。

図1 シュンペーターによるイノベーションの定義
ヨゼフ・シュンペーター、『経済発展の理論(上)』(岩波文庫)のpp.182-183から引用。

イノベーション≠技術革新

 最近は少し変わりつつあるが、これまでイノベーションに対しては技術革新という日本語が充てられてきた。「イノベーション(技術革新)」という表現も多く使われてきたため、イノベーション=技術革新という思い込みが私たちの中に染み込んでいる。しかし、この思い込みは日本特有のもので、少なくとも欧米では、イノベーション=技術革新という考え方を採っていない。

 「重箱の隅を突っつくような話をするな」と思われるかもしれないが、決してそんなつもりはない。イノベーションの定義をはっきりさせることは、実際にイノベーションに挑戦したり、それに挑戦する部下を支援したりする際に不可欠となるからだ。

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