本コラムは、数々のイノベーションで広く知られる3Mグループにおいて、大久保孝俊氏が体得したイノベーション創出のためのマネジメント手法を具体的に紹介します。大久保氏は、自身で幾つものイノベーションを実現しただけでなく、マネジャーとして多くの部下のイノベーションを成功に導きました。

 イノベーションに強い企業や組織の根底には必ず「強固な企業(組織)文化」(以下、企業文化)がある。その文化は、イノベーションを加速するポジティブな人間の本質を強化し、イノベーションを阻害するネガティブな人間の本質を抑制する仕掛けを備えている。それ故、組織の創造力を高めるには、そのような仕掛けを持った企業文化を構築し、強化していかねばならない。

人間の本質に働きかける

 その具体的な方法として筆者が提案しているのが「Can RUBシステム」である。Can RUBシステムの詳細な説明に入る前に、中核となる考え方を明確にしておきたい。図1は、Can RUBシステムが備える10の仕掛けと、8つの人間の本質の相関関係である。人間の本質は、イノベーションに対してポジティブに作用するものを上段に、ネガティブに作用するものを下段にまとめて記載した。これを見て分かるように、Can RUBシステムが備える10の仕掛けは、ポジティブな本質を強化し、ネガティブな本質を抑制するように設計されている。これがCan RUBシステムの中核となる考え方だ。

図1 「Can RUBシステム」の仕掛けと人間の本質の相関関係
Can RUBシステムの10の仕掛けは、イノベーションに対してポジティブに作用する人間の本質の出現を強化し、ネガティブに作用する人間の本質の出現を抑制するように設計されている。
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 Can RUBとは、英語で「磨くことができる」という意味である。企業文化をイノベーションに強い文化に磨き上げるという思いを込めて名づけた。具体的には、3つのシステムを磨き込んでいく。

 3つのシステムとは、「Can Recognize(気づくことができる)」システム、「Can Utilize(使うことができる)」システム、「Can Believe(信じることができる)」システムのことである(図2)。RUBは、Recognize、Utilize、Believeの頭文字でもある。

図2 イノベーションに強い企業文化を構築する「Can RUBシステム」
「Can RUB」は、「Can Recognize(気づくことができる)」システム、「Can Utilize(使うことができる)」システム、「Can Believe(信じることができる)」システムの3つのシステムで構成されている。3つのシステムは本来同等だが、今回はCan Recognizeシステムの説明が中心となるので、図ではCan Recognizeシステムに関わる部分の字を大きくした。
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