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スタジアムとアリーナが拓く未来

速度6倍 ソニー、芝生育成早めるLED照明システム

単一スタジアムでサッカー・ラグビー併催実現へ 

2016/09/27 00:00

内田 泰=日経BP社デジタル編集センター

 サッカーとラグビーを単一スタジアムで併催可能にする――。

 ソニーグループで、主に放送・業務用製品を中心としたソリューションを提供しているソニービジネスソリューションは、スポーツ施設産業のイベント「スタジアム&アリーナ2016」(2016年9月26~28日、横浜アリーナ)で、LEDを使って天然芝の成長を促す照明装置「BRIGHTURF」を出展している。鹿島アントラーズFC、信州大学、昭和電工、セキシン電機と共同開発した。

ソニービジネスソリューションなどが共同開発した、LEDを使って天然芝の成長を促す照明装置「BRIGHTURF」。LEDには植物工場で採用実績がある、国産の高効率チップを採用。幅はアーム伸長時に16.75m
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 これまでハロゲンランプを使った芝生育成用の照明装置はあったが、同ランプは熱を発生するため高温・多湿の日本では芝生が枯れてしまうなどの問題があった。LEDを使ったシステムは世界初という。

 光合成に最適な赤色光(波長660nm)と青色光(同450nm)を、1.5mの高さから90m2(平方メートル)の範囲で照射する。育成速度は通常の6倍に高まるため、「日陰にある芝生が太陽光下と同等の速度で育つ」(ソニービジネスソリューション 営業部門 メディアソリューション営業2部 統括部長の東倉雄三氏)という。

 屋根付きのスタンドが敷設されたスタジアムでは、グランドが日陰になる部分が多く、日照不足で天然芝の発芽や成長時期が限られる課題を抱えていることが多い。共同開発に参画した鹿島アントラーズFCが指定管理者となっている茨城県立カシマサッカースタジアムもそうだった。

「スタジアム&アリーナ2016」に出展している「BRIGHTURF」の小型版。寸法は110×95cm程度。これを3台ほど接続して使う。ゴルフ場などでの利用を想定している
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 同スタジアムは2016年からBRIGHTURFの本格稼動を開始。主にゴールエリアや副審が走行するライン際など芝生の磨耗が激しいエリア、さらに日陰になるエリアにLED光を照射することで、芝生の回復を早めてピッチ全体の均質化に成功した。

 BRIGHTURFの導入後、カシマサッカースタジアムではプロ・アマを通じて年間100日前後の稼動日数を同170~180日に増やすことを目標に掲げて管理しているという。

 このほか豊田スタジアムもBRIGHTURFを導入した。欧州に比べるとサッカーやラグビーの専用スタジアムが少ない国内では、単一スタジアムにおけるサッカー・ラグビー併催のニーズは高い。しかし、これまではそれぞれに良好なピッチコンディションを提供するのは困難とされてきた。豊田スタジアムはその実現を視野に入れて、ソニービジネスソリューションと共同プロジェクトを展開しているという。

 実は、現時点ではBRIGHTURFに“ソニー独自”の技術が注入されている訳ではない。LEDは昭和電工製で、照明装置の構築はセキシン電機が手掛けている。

 ソニーの出番はこれからだ。芝生の成長情報、水分や肥料など作業履歴、日照や温度など環境情報を取得・分析し、芝生管理を効率化するソリューションの提供を目指している。現在は基礎研究の段階だが、実用段階に入ればスタジアムをより多目的に使え、稼働率を高められるとしている。

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