日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第12回:可変バルブリフト機構 ポンピングロスと、吸排気効率を自在に操る」の転載記事となります。

 吸排気効率をエンジン回転数の全域で高めるために、最近のエンジンには可変バルブタイミング機構が搭載されている。だが可変バルブタイミング機構は、バルブを開いている時間を変えることはできない。

 今回紹介する「可変バルブリフト機構」は、最大リフト量を変えることでバルブの開いている時間を調整できるものだ。単独の機構としても効果が望める装置だが、可変バルブタイミング機構の搭載が一般的になりつつある中で、さらに効率を高めるために採用されることが多い。可変バルブタイミング機構と組み合わせることで、より効果を発揮できる機構であるとも言える。

 可変バルブリフト機構を用いると、エンジンの出力要求に合わせて吸気バルブの開く量を変えることができ、低燃費と高出力を両立しやすくなる。燃焼室内に入る混合気の量や流入流速などを調整できるようになるためだ。

可変バルブリフト機構の基本動作

 ガソリンエンジンは、吸気量に合わせて燃料を噴射することで出力を調整している。「燃料だけを減らすことで出力を抑えれば良いのでは」、と思うかもしれない。だが、空燃比(燃料に対する空気の質量の割合)を上げると燃焼温度が上昇する。最悪の場合は燃焼室内が過熱し、ピストンや点火プラグが溶けてエンジンが壊れてしまう。

 そのため、エンジンにはインテークマニホールドの手前にスロットルバルブを設けており、空気の流量を調整している。これによって出力を制御しているのだが、スロットルバルブで空気の流れを絞ると吸気管内には負圧が発生する。負圧はブレーキの倍力装置や吸気量の推定、EGR(排ガス再循環)の導入などに利用されてもいるが、エンジンが空気を吸い込む際の抵抗(ポンピングロス)にもなる。

 負圧は吸気バルブが開いてピストンが下降することによって生じているが、スロットルバルブで絞り込まれることでさらに高まる。しかしスロットルバルブ通過後は再びインテークマニホールドの容量に応じた負圧に落ち着くため、スロットルバルブ部分の負圧の高まりは抵抗である割合が大きい。

 一方、吸気バルブによって生じる負圧は、燃焼室の充填効率を左右する要素でもある。低回転域にはリフト量を減らすことで流速を高めて慣性過給効果を高めることができる。一方、高回転高負荷時には燃焼室容積とバルブ径から最大の効率となるリフト量を与えることで高出力化を図る。

 さらに、低負荷時にもリフト量を減らすことで吸気量を制限できれば、スロットルバルブによる吸気の絞り込みを減らせるので、ポンピングロス改善につながる。

 可変バルブリフト機構はその構造と目的から(1)連続可変型、(2)カム山切り替え型、(3)油圧制御型─の3種類に大別できる(表)。

表 可変バルブリフト機構の分類
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 (1)連続可変型は、ロッカーアームの支点を変化させるリンク機構を設けるもの。ステッピングモーターでリンクを制御し、バルブリフト量を緻密に制御する。(2)カム山切り替え型は、ロッカーアームやバルブリフターに切り替え機構を設けるもの。低負荷用と高負荷用など2種類のカムを切り替えてバルブリフト量を変化させる。(3)油圧制御型は、排気側のバルブは従来通りカムシャフトで直接駆動するが、吸気側はカム山がポンプを押して発生させた油圧でバルブを駆動するものだ。

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