日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第11回:4輪駆動システム(下) モーター使う電動4WD、環境性能向上にも寄与」の転載記事となります。

 スポーツカーを中心に、エンジン/モーター独立型の電動式4WDが普及の兆しを見せている。ホンダが近く発売予定のスポーツカー「NSX」は、ミッドシップにV型6気筒エンジンを縦置きにして、9速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)にモーターを組み合わせ、前輪をモーターで駆動する電動式4WDである。

 これはエンジンレイアウトの違いこそあれ、レジェンドのパワートレーンを前後反転させたものと考えられる。前輪の駆動モーターは左右独立であり、コーナリング時には外側前輪の駆動力を増やしてコーナリングフォースを発生させるだけでなく、内側前輪は回生充電することで電気エネルギーとして回収できる。

 BMW社「i8」は前輪をモーター、後輪をエンジンで駆動するPHEVのスポーツカーである(図4)。こちらはNSXほど性能を追求した高性能モデルではなく、前部のモーターでEV走行を実現し、後輪はガソリンエンジンによる駆動でトータルでの動力性能を確保しながら、環境性能を高めている。

図4 エンジン/モーター独立型の電動式4WD(BMW社「i8」)
後輪はエンジンで駆動し、前輪はモーターで駆動する。EVモードではFF、電池充電量が少ない状態ではMR、強い加速が必要な時にはモーターとエンジンの4WDで走行する。エンジンにはスターター兼オルタネーターが付く。
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 Porsche社「918 Spyder」はBMW社のi8と同様に、前輪をモーターが駆動するミッドシップカーだが、後輪は強力なエンジンと変速機に内蔵されたモーターが駆動することでより動力性能を高めている(図5)。

図5 エンジン/モーター独立型の電動式4WD(Porsche社「918 Spyder」)
V型8気筒エンジンをミッドシップに縦置きし、変速機にはモーターを組み合わせる。EVモードではモーターで走行するほか、エンジンで走行している場合に安定性を高めるために前輪をモーターで駆動する。
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 これらスポーツカーに電動式4WDが導入された目的は大きく分けて二つある。一つは燃費や排ガス規制への対応。発進や低速時、緩加速時にはエンジンによる駆動を減らし、モーターを積極的に利用することで燃費性能を高め、排ガス規制をクリアすることができるのだ。

 そして進化するスポーツカーらしい動力性能を実現するためにも電動式4WDは貢献できる。ミッドシップに配置した強力なパワーユニットで生み出す駆動力は、たびたびリアタイヤのグリップを超えることもある。もちろんESC(横滑り防止装置)によりエンジンパワーが抑制され、4輪のブレーキを独立制御することにより走行中の安定性は高められるが、モーターで前輪に駆動力を伝えることで、速さを損なうことなく車体を安定させるために利用するのである。スポーツカーの4WD化が進む中で、より先進的で環境性能も備えた電動式4WDを採用したモデルは、今後も登場すると予測できる。

 なお、EVベンチャーでは前後にモーターを搭載したEVのスポーツカーを開発している。例えば、米Tesla Motors社「モデルS」は前後にモーターを搭載した4WDを発売している。

 また、クロアチアのRimac社は「Concept_One」という4WDのEVスポーツカーを市販化に向けて開発を進めている。同車は、左右一体型のモーターを前後に備えトータルで1000kW、1600N・mの大トルクで静止から2.8秒で100km/hに到達する加速力を誇る。高出力型EVは高電圧の充電インフラを必要とするため、普及にはまだ時間がかかることが予想されるが、技術的にはEVベンチャーでも開発可能であることを証明している。

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