「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者や社員が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み
課長として数十人の部下の管理を任されています。モチベーションを高めるために、できる限り部下の話に耳を傾けるように努めており、新しい提案は極力採用するようにしています。しかし、逆に厳しく接するのは苦手で、そのせいなのか、部下から少し甘く見られている気がします。例えば、勝手に動いて失敗したような場合でも言い訳する部下が多いのです。効果的な叱り方があったら教えてください。

厳しく叱るべき場面とは

肌附氏— 管理者が部下を厳しく叱らなければならないケースは2つあります。1つは、日頃厳しく指導し、伝えているルール・規則、安全に関する違反を犯したときです。例えば、飲酒運転をして事故を起こしたケース。また、仕事で規則を守らずに大きな問題を起こしてしまったケース。こうした場合は徹底的に叱ります。フォローする必要は一切ありません。むしろ、みんなの前で叱って事の重大さを本人だけでなく、メンバー全員にも周知すべきです。

 もう1つは、過失。いわゆるうっかりミスやポカミスはもちろん、たとえ一生懸命にやっていたとしても、本人が気づかずに想定外で問題を起こしてしまった場合には、やはり厳しく叱らなければいけません。叱らないと、その部下は緊張感が欠けて意識を変えることができず、再発を繰り返してしまう危険性があるからです。加えて、そうした部下の態度を放っておくと、それで構わないと思うメンバーが増えて、職場の雰囲気もだらけてしまう可能性があります。

編集部:なるほど。なんでも叱りつければよいのではなく、厳しく叱るべき場面があるのですね。

肌附氏— そうです。ただし、過失の場合は適度な“逃げ道”をつくってあげることが大切です。

編集部:逃げ道とは何でしょうか?

肌附氏— 厳しく叱らなければいけないと、部下を徹底的に追い込んでしまう管理者がいるのです。ところが、起きてしまったことに対して、部下を八方塞がりの状態で責め立てると、部下はどうしたらよいのか分からなくなってしまう。

 そこで、過失を叱る際には叱った最後にフォローすることが大切です。例えば、厳しく叱った後に、「実は、私も昔は同じようなミスをしたことがあって、すごく上司に叱られたことがあったんだよ。誰でも1度くらい経験することかもしれない。今後、気をつけなさい」と。

 すると、しょんぼりとしていた部下でも、「ああ、この人はフォローしてくれた。自分だけじゃない。上司も若い頃にはそんなことがあったんだな」と安堵し、「次からは絶対に迷惑を掛けないようにしよう」というふうに思うものです。

編集部:過失の場合は、叱った後にフォローし、萎縮してしまうことを防ぐ。決して突き放すのではなく、仕事の質を高める方向へ部下を導くというわけですね。

肌附氏— 管理者がすべきことは部下を育てることですから、叱るという行為も当然、部下の育成につなげるためのものです。従って、厳しく叱りすぎて部下が萎縮し、仕事へのモチベーションが下がってしまうと元も子もありません。

編集部:最近は叱られ慣れていないために、厳しく叱られると落ち込んでしまう部下が少なくないかもしれません。

この先は有料会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)登録で5月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら