電力市場において複数の新市場の検討が大詰めを迎えている。しかし、ベースロード市場や容量市場など特定の政策目的を担った人為的な市場の場合、制度やルールに引っ張られ、他の電力市場との間で価格形成に歪みが生じるおそれがある。制度設計を進める政府はその影響をどこまで見通せているのだろうかーー。

 日本卸電力取引所における東西エリアの夜間価格の水準は、4月の下押し傾向が収まり、ここにきて日中平均価格より高いという、従来は目にすることがなかった現象が見られる。北海道エリアでは3月以降も高値が続いている(「北海道の電力市場価格がおかしい」参照)。

 本研究会はこうした不自然とも言える現象の背景に、硬直的に投入されるグロスビディング(*1)の入札価格が、相対的に高止まりしていることがあるのではないかと考えている。市場は価格シグナル機能を果たして初めて意義があるとの立場から、こうした人為的な市場運営や制度に由来する価格形成をどのように考えたらよいか論じてみたい。

*1:大手電力が取引の透明性を高める目的で2017年6月から始まった「自主的取組」の1つで、社内取引の一部を市場経由で行う売買両建て取引。

 図1は、電力自由化のテーマの下で議論が展開されたり、準備が進んだりしている市場や仕組みを俯瞰したものだ。

電力を扱う様々な市場価格や取引価格は「一物一価」に基づいて決まる
図1●電力自由化における各市場の位置づけと関係(出所:日経エネルギーNext電力研究会)

「一物一価」を基調とした複数の市場の関係性

 既に運営されている市場に加えて、現在、資源エネルギー庁の「制度検討作業部会」や電力・ガス取引監視等委員会の「制度設計専門会合」などで議論されている需給調整市場や間接オークション、間接送電権、ベースロード市場、容量市場、先渡市場について、既存市場との関係性を模式化した。従来からある小売り競争や電源開発・運営に関する競争、最近事業者間で自律的に発生している相対取引・卸取引もこの図の中に配置してみた。

 そして、これらを電力の現物ビジネスに沿った市場や競争(黄色の背景色)と、そこから派生的に生じている市場や仕組み(緑の背景色)に分け、複雑な現行の制度議論と電力自由化の仕組みの関係性をいったん整理してみた(誤解や違和感が生じることも覚悟しつつ、あえて関係者の意識を喚起することを試みた図である点をご容赦いただきたい)。

 この図にある通り、水色の背景色で示した既に運営されている市場や仕組みは、自由化の中で本質的に必要とされる市場機能だ。時間前市場など、電力ならではの市場もあるが、概念的には金融市場などでも同様の機能が存在し、役割に応じて市場が分化している。

 これら分化した市場は、その商品に対する経済活動のニーズや参加者の関心度合いで、流動性の多寡や取引期間の長さが決まる。その際、それぞれの市場や仕組みは相互に合理的な水準や関係性を保った価格形成が行われる。

 つまり、将来に向けて様々な要因を反映しながら変動する価格であっても、最終決済時点では1つの価格に収れんする。いわゆる、経済学が説くところの「一物一価」の法則である。