経済産業省は、発電設備の固定費の一部を卸電力市場とは別の仕組みで小売電気事業者から徴収する「容量市場」を2020年に立ち上げる。供給力が安定的に確保できれば卸電力価格が下がり、「中長期では小売電気事業者の総負担は現行と同等水準に収れんする」と経産省は説明してきた。だが、経済学的に見て根拠は乏しい。

 2017年12月26日、経済産業省はこれまで検討を続けてきた4つの制度(ベースロード電源市場、間接送電権、容量市場、需給調整市場)について「中間論点整理」(第2次)を提示した。ここまでの成果と課題をとりまとめたもので、今後の制度設計の土台となる。

 果たして新制度は議論が尽くされたのか。ここでは、今後の進み方次第では需要家が負担する電力料金にも大きく影響しかねない容量市場の問題に迫ってみたい。

 通常の卸電力市場は電力量1kWh当たりの価格を30分ごとに決めて売買される。

 これに対して、容量市場は電力を生産(発電)する設備や能力に対して、小売電気事業者がその建設や維持の費用を電力の売買とは別に負担する仕組みだ。政策的には、将来にわたって供給力を安定的に確保することを目的としている。

 どんな財やサービスでもそれを生み出す設備や能力は必要だが、容量市場のように設備の維持・形成だけを切り出して、それに必要な費用を市場機能を通じて回収する仕組みは、電力以外のビジネスには存在しない。市場経済では商品の売り上げから投資を回収するのがごく当たり前なのに、なぜ電力だけ特殊な仕組みが必要なのか。このことは、よくよく考える必要がある。

地域独占で確実に回収できた固定費

 まず、電力市場の価格形成モデル化から、電力価格の意味について考えてみたい。

 一般的な市場価格の決まり方でいえば、売り手側の電力量1kWh当たりの限界費用で決まる供給曲線と、買い手が望む1kW当たりの買い値と量から決まる需要曲線との交点で均衡価格が決まる。

 電力の特徴を踏まえた需要曲線と供給曲線を表現したのがグラフ1だ。

電源の固定費を織り込んだ価格が可能
グラフ1●地域独占時代の価格形成(出所:日経エネルギーNext電力研究会)

 グラフ1は、電源の固定費(P0)を回収できる価格水準P1で市場の均衡価格が成立しているケースを示している。電源の固定費を上回る水準で常に均衡価格が成立する状態を想定したもので、旧一般電気事業者がエリア独占を保証されていた時代のポジションに相当する。

 その際、①需要曲線はほぼ垂直であること、②供給曲線は量が増えるにつれ価格に対して曲線の傾きが次第に急峻になることが電力市場の特徴と言われている。ここではこれを前提に電力の価格形成をモデル化した。

 ①は、需要家は電気が必要な時には必要なだけ消費する必要があり、価格の高低によらずに需要量が決まる財と考えられるためだ。経済学ではこれを需要の価格弾力性が低いという。

 ②は、発電効率の高い、つまり競争力のある電源から順番に発電可能な価格水準(発電設備の限界費用)に達することから、需要曲線に比べるとゆっくりとした上昇カーブになる。価格の上昇に応じて供給力が順次市場に投入される。供給力が不足し始めると、発電に必要な限界費用に見合う形で価格が急速に上昇する。

 グラフは市場機能を通じて「生産者余剰」(黄色部分)というメリットを発電側(供給側)が享受できることを示している。

 そして、需要家側は「消費者余剰」(水色部分)を享受できると経済学では考える。これら生産者余剰と消費者余剰を合わせた面積が「社会的厚生」となり、市場機能を利用することで実現した社会的メリットと考えられる。