「NTTの対抗馬として通信事業に参入して激しく戦った。そのNTTと新会社を作るとは・・・。時代は変わったんだな」。ある東京電力OBは感慨深げに、そうつぶやいた。

新会社の設立発表会見には東京電力ホールディングスとNTTの両社長が登壇した
東電HDの小早川智明社長(左)とNTTの鵜浦博夫社長(右)

 東京電力は、NTT民営化の翌年に当たる1986年に通信子会社、東京通信ネットワーク(TTnet)を設立した。東電だけでなく、大手電力各社が通信子会社を設立。電力系通信事業者は、自由化で競争が導入された通信市場でNTTと戦った。

 その後、TTnetはパワードコムとなり、2006年にKDDIに吸収合併された。これをもって東電は通信事業から撤退した。

 「当時、パワードコムの売却先にNTTという選択肢はなく、KDDI一択だった。NTTと戦うための会社だったからね」。前出のOBは振り返る。

 それから12年。東電は4月18日、NTT持株会社と新会社TNクロス(ティーエヌクロス)を設立すると発表した。新会社の設立は7月2日の予定で、資本金は1億円。東電ホールディングス(HD)とNTT持株会社が折半出資する。

NTTの電話局でVPP基盤作る

 新会社の狙いは、バーチャル・パワー・プラント(VPP)の基盤構築にある。

 NTTは全国に通信設備を収容した通信ビル(電話局)を保有している。東電エリアだけでも約1200カ所に上る。通信ビルは非常用電源として鉛蓄電池を備えているが、2030年頃までに順次リチウムイオンに切り替えていく。

 リチウムイオン電池の設置面積は、鉛蓄電池の4割弱。切り替えに生じる空きスペースにもリチウムイオン電池を追加設置し、これをVPPに活用する。リチウムイオン電池への切り替えと並行して、屋内配電のHVDC(高電圧直流)化も進めることで、消費電力を2割削減する。

 鉛蓄電池の設置容量は全国で270万kWh。そのうち110万kWhが東京電力エリアにある。HVDC化とリチウムイオン電池への切り替えを進めることで、全国で180万kWhのリチウムイオン電池を設置すれば、非常用電源として現状と変わらない電力を確保できる。

 空きスペースにさらにリチウムイオン電池を設置すると、全国で550万kWh、東京エリアだけでも250万kWhとなる。

 NTTの通信ビルは電話局として活用していた施設なので、東電エリアはもとより、全国各地にくまなく存在する。通信ビルの蓄電機能を活用することで、VPPの基盤にしようというわけだ。