Hannover Messeの主役は製造業だが、Industrie 4.0ではOT(Operational Technology)とIT(Information Technology)の融合が重視されていることもあって、近年はIT企業による展示が拡大している。その中でもひときわ大きい存在感を放つのが、米Microsoft社である。2017年のHannover Messeでは、同社のヘッドマウント・ディスプレー「HoloLens」によるAR(Augmented Reality)/VR(Virtual Reality)を製品開発やアフターサービスに活用した事例の展示が目立っていた。

 Microsoft社は例年、自社ブースにパートナー企業のITソリューションやユーザー企業の事例を並べる展示スタイルを採っている。そのうち、HoloLensを製品開発などに用いた事例を紹介していたのがドイツThyssenKrupp社だ。同社は、介護機器である階段昇降機の設計や顧客への提案にHoloLensを活用している。

ThyssenKrupp社の階段昇降機
ThyssenKrupp社の階段昇降機
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 階段昇降機とは、体が不自由で自力での階段の上り下りが困難な人が安全に移動できるようにするための、主に一般家庭向けの介護機器である。ガイドレールやそれに沿って駆動する椅子などから成る。そのうち特にガイドレールについては、階段や踊り場などの間取りに合わせなければならないので、基本的に個別設計となる。

 従来は、設置場所となる家庭などを実際に訪問し、さまざまな箇所の寸法を手作業で計測した上で、ガイドレールなどを設計していた。それだけでも多大な労力を必要としていたが、他にも設計途中で手戻りが生じる、あるいは設置後に不具合(主に使いやすさに関すること)が判明するといった問題を抱えていた。

従来の手作業による計測の様子
従来の手作業による計測の様子
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 なぜ設計を始める前に、これらの問題に気付けないのか。それは、顧客が設置後の状況を事前にイメージするのが難しいからだ。もちろん、顧客も既存の設置事例などを見て自宅に設置した状況を自分なりに想像するのだが、“モノ”が存在しないので、どうしても見落としが出てくるのである。

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