施設園芸農業は、日本の農業経営において必要不可欠なものであるが、園芸用施設の設置面積、施設園芸農家数ともに減少傾向にある。その一方で、施設園芸農業に関する特許出願状況をみると、日本は「人工光型植物工場に用いられる照明およびその制御方法」のような高度な環境制御技術での技術蓄積がある。農業生産において重要な位置を占める施設園芸農業を維持・拡大するためにも、作業の省力化・快適化に関わる技術開発を進めるとともに、オープンイノベーションによるプラットフォーム作りを戦略的に行い、品種、育苗、栽培技術も組み合わせ、パッケージとして海外の施設園芸農業市場を開拓することが望まれる。

 施設園芸農業とは、ガラス温室やプラスチックハウス等の構造物の中で、生育環境を制御しつつ野菜、花き、果樹などを栽培する農業です。施設内温度など単一の環境要素を制御するものから、いわゆる植物工場のように多数の環境要素を複合的に制御するものまで多岐にわたっています。

 施設園芸農業は、園芸作物全体で広く利用されており、日本の農業経営において必要不可欠な存在となっています。しかし、園芸用施設の設置面積をみると、1999年をピークに減少しており、施設園芸農家数も1985年をピークに減少傾向となっています。特に野菜作では、2015年にはピーク時の約半分まで減少しています。

図1 園芸用施設の設置実面積の推移
出典:「施設園芸をめぐる情勢」(農林水産省、平成28年6月)を基に三菱化学テクノリサーチが作成
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図2 施設園芸農家(販売農家)数の推移
出典:農林水産省「園芸用施設及び農業用廃プラスチックに関する実態」の統計データを基に三菱化学テクノリサーチが作成
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 一方で、野菜、果樹、花きといった園芸作物は、日本の農業総産出額の約4割を占め、また新規就農者の8割以上が園芸作物を中心作物として選択する魅力のある分野です。

 こうした中、日本における農業政策では、地域エネルギーと先端技術を活用して周年・計画生産から調製、出荷までを行う施設である「次世代施設園芸拠点」の整備を中心に、施設園芸農業の展開を図っています(食料・農業・農村基本計画)。一方、科学技術政策としては、「スマート生産システム」として、これまで農業の現場への導入が十分でなかったICTやロボット技術等を活用し、大規模生産システムによる農作業の自動化・知能化、熟練者のノウハウの形式知化、機械化が困難な作業の軽労化など、超省力・高生産のスマート農業モデルの実現が推進することとされています(科学技術イノベーション総合戦略2016)。

このような背景の下、特許庁は「平成28年特許出願技術動向調査」において、施設園芸農業に関する特許出願動向を調査し、その実態を明らかにしました。本調査の主要部分を本稿で紹介します。

 図3に本調査の技術俯瞰図を示します。本調査では、施設園芸農業に関する主要技術と、同技術を用いた応用産業、施設園芸農業の技術において解決しようとしている課題を調査範囲としました。

図3 技術俯瞰図
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