ソニーが12年振りに「aibo」を出し、ロボット事業に再参入した。aiboは、同社が「本質」へ回帰したことを意味するのか。元ソニーの「出る杭」社員にして、著書「ソニーをダメにした『普通』という病」で同社へ痛烈なダメ出しをした筆者が考察する。

 前回は、ソニーが消費者重視に帰ってきたことから、再び本質に迫れてきたと書いた。今回は、その消費者重視がどこまで本物なのかを見てみよう。

「KANDO@ラストワンインチ」

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経営方針を説明する平井一夫氏
 2017年度の経営方針説明会(2017年5月開催)で、ソニー社長の平井一夫氏は、2018年度以降に向けて「KANDO@ラストワンインチ」を訴えた。

 いわく、「ソニーがお客様に感動をもたらす場所は、お客様に最も近いところ、つまり『ラストワンインチ』です。(中略)。ソニーはお客様の体験のインターフェースとなる商品をつくり続けます」

 なにしろ、「ラストワンマイル」ではなく「ラストワンインチ」である。これは、消費者の至近に商品価値があることを強調した考え方に他ならない。

 そして、平井氏は、「KANDO@ラストワンインチ」を体現した商品として、有機ELテレビを筆頭に、スマホやカメラ、業務用超大型ディスプレイなどを挙げた。

 実は、拙著「ソニダメ」では、ロボットだけでなく、有機ELテレビにも触れている。2007年にソニーが有機ELテレビを世界初で発売したことを、私は高く評価していたのである(2010年に撤退したが)。

 「ラストワンインチ」にこだわれば、テレビにこだわらざるを得ない。テレビは、今でも多くの消費者にとって主要な映像体験のインターフェースであるからだ。

商品価値は、消費者の頭の中にある

 ここで、あらためて「商品価値」というものを本質的に捉え直してみよう。商品価値は、本当はどこにあるのだろうか?

 我々は、知らないもの、すなわち認識していない商品に商品価値を感じることはない。他方、まだ世の中に存在していない新商品にも、それが発売されると認識すれば商品価値を感じる。ならば、商品価値は、消費者の頭の中の認識が生むものということになる。

 商品は、消費者の頭の中に商品価値を生む認識をもたらすもの、要は、消費者の頭の中に商品価値を生むものなのだ。つまり、商品価値は、商品にはない。消費者の頭の中にある。だからこそ、世の中はそうと気づいていないけれど、商品は何も変わらないのに不祥事などでブランドイメージが落ちると商品価値は落ちる。

 それでも商品価値が商品にないことがピンと来ないようであれば、「商品価値」を「経済的価値」と置き換えるといいかもしれない。商品は、消費者の頭の中に経済的価値を生むものであるということだ。

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