本コラムは、「製造業、未来への戦略」という名の通り今後の製造業の方向性を論じるコラムだが、今回から3回に分けてエネルギー企業の将来について語りたい。といっても、製造業とエネルギー企業は密接な関係がある。エネルギー企業にとって製造業は大口顧客であり、エネルギー産業の行方は製造業にも大きな影響を及ぼすからである。

岐路に立つエネルギー産業

 エネルギー関連企業は、いま大きな変革を迫られている。コモディティーである電力、ガス、石油などの価値が低下していくと予想されるからだ。例えば電力についてみてみると、2010年代中旬以降、ドイツ市場において電力卸市場価格がマイナスとなる事態が発生している。これは、風力発電を中心とする再生可能エネルギーの発電量が大幅に拡大し、需要と供給のバランスが緩んだためである。

 2050年に向けて各地域・各国が再生可能エネルギー導入の目標達成を目指す中、この傾向が継続・拡大することは想像に難くない。加えて、日本において電力やガスの小売りが自由化され、電力会社やガス会社以外もそれらの販売が可能になった今、既存の電力会社、ガス会社の電力/ガス販売による売り上げは減少する。これは自由化で先行する欧州などの事例を見ても明らかである。

 そもそも、需要家は、電気、ガス、石油が欲しいのではない。それらを活用することによる便益を求めているのである。すなわち、快適な空間であり、テレビを通じたコンテンツの鑑賞であり、目的地への移動などである。電力、ガス、石油などはそれを実現するための手段の一要素に過ぎない。

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図1 欧州主要ユーティリティーの小売り戦略の変化の方向

 これから顧客に選ばれて生き残るのは、顧客の便益を捉えることができる企業だ。そのような企業は顧客の立場に立ち、電気・ガス・石油といったコモディティーを自由に調達し、顧客に最適なサービスを提供していく。他方、コモディティーの製造、そのための設備管理などのオペレーション実施は分化していくことになるだろう(図1)。

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