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次世代福祉、コストから経済への転換

パラスポーツの“カッコよさ”を伝えよう!

超福祉展:東京都が制作した「Be The Hero」秘話

2016/11/25 00:00

土屋 季之

 東京都では、2020年に向けて、障害者(パラ)スポーツの普及啓発活動に力を入れている。その1つが、2016年3月にYouTubeで公開されたプロモーションムービー「Be The HERO」だ。公開後、YouTubeと東京都オリンピック・パラリンピック準備室のFacebook上での再生回数を合わせて20万回を超え(2016年11月現在)、学校の教材や関連の非営利組織(NPO)の資料などでも活用されている。11月8日から14日まで開催された超福祉展、その5日目のトークショーでは、その映像制作に携わったPOOL Inc.の林潤一郎氏などが登壇し、映像制作の意図や、今後の展望、制作裏話などを紹介した。

東京都が制作した2020年の東京パラリンピックプロモーション動画「Be The Hero」

広がらないパラスポーツへの関心

 映像制作の背景には、パラスポーツの認識度の低さがある。東京都の2014(平成26)年度の調査によると、直近1年で実際に会場に足を運んでパラスポーツを見たことのある人は2%に過ぎない。また、テレビやネットで「見た」と回答した人は全体の50.3%だが、視聴状況を見るとネットでの視聴が極度に少ないことから、能動的に視聴している率は非常に低いのではないかと分析されている。

 これに対して、東京都が「すべての人に、パラスポーツのかっこいいを証明せよ」というミッションを掲げて制作したのが『Be The HERO』だった。

 映像は、重低音の効いたロックミュージックをバックに、実際にプレーするパラ選手たちの姿にマンガのドローイングがミックスされて映し出されるという内容。抑えられた色調とくっきりとした光と影のコントラストによって、選手たちの動きが際立って見える。

 クリエーティブディレクション、コピーライトを担当した林氏によると、「かっこいいを『HERO』という言葉で表現するだけでは弱いという思いで」マンガと、ロックミュージックを採用したという。映像で取り上げた競技は車いすテニス、5人制サッカー、陸上、ゴールボール、車いすラグビーの5種目で、それぞれの競技について人気マンガ家にイラストを依頼した。また、音楽プロデュースにはロックバンド「RIZE(ライズ)」などで活躍するベーシストのKenKen氏を起用している。

表:「Be The Hero」に登場するパラスポーツ
競技出演選手マンガ家 ※()内は主な作品
車いすテニス国枝慎吾浦沢直樹 (YAWARA!)
5人制サッカー日本代表チーム高橋陽一 (キャプテン翼)
陸上競技高桑早生窪之内英策 (ツルモク独身寮)
ゴールボール日本代表選手他真島ヒロ (FAILY TAIL)
ウィルチェアーラグビー日本代表選手他ちばてつや (あしたのジョー)

 映像制作当初は「制作チームの誰もが、身近に障害者がいなかった」ため、実際に競技現場に出かけて間近で観戦、見学することからスタートしたと林氏。最初は「どうやって接していいか分からなかった」が、屈託なく接してくれるパラアスリートに接し、「障害を持つ人たちも同じ人間なんだと思う間もなく、同じ人間として語ることができた」と感じ、林氏は映像制作の手掛かりをつかんだという。

「目が見えない選手に“どんな映像がいいか”と聞いたら、『私の周りの人がカッコイイと思うように作ってください』と言う。障害者を扱う映像でよくあるような“お涙頂戴”では絶対にダメなんだと、同じ人間としての感覚を広げていけばいいんだと気付いた」

 映像制作のために宮城マックス(車いすバスケ)の藤井選手のインタビューをした際に、障害者取材に慣れていないスタッフに「どんなことでも聞いてほしい。失礼な質問でも面白くていいでしょう」と藤井選手に笑顔で言われ、普通の人と同じように関わることが大事だと気付かされたというエピソードも披露した。

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