[画像のクリックで拡大表示]
古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
 技能伝承や技術伝承など、広い意味での教育の重要性を否定する工場はない。ところが、伝承に値する教育が適切に行われているかと言えば、かなり怪しくなってくる。教育には、「すぐの生産に必要な技能」を確保するための教育と、「工場の将来の成長に必要な技能」を確保するための教育に二分される。

 日々の生産は生命線だ。来月からの生産増に対応するために増員をする際の教育や急な退職の穴を埋めるための作業者教育などの「すぐの生産に必要な技能」への教育はどの工場も手厚い。

 一方、作業者の多能化教育やベテラン作業者のスキルを若手に移転するための技能伝承教育など「工場の将来の成長に必要な技能」の教育は、今実施しないとたちどころに生産に影響が出るというものではない。むしろそのような教育を実践することで、ベテラン作業者の負荷を増やしてしまい、生産性が悪化することすらある。目の前の「生産」を優先すると、どうしても時間と手のかかる教育の優先順位は下がる。

[画像のクリックで拡大表示]

強い工場づくりのポイント

 生産体制に余裕がない中で、教育、特に工場の成長に必要な技能を育成することをどれくらい重視するか。難しいことだが、これは工場の将来に関わる問題だ。管理者は、日々の生産に追われている生産現場から「生産か教育か」の二者択一を迫られる。生産現場が教育の優先順位を下げる最大の理由は多忙だ。だが、管理者は、その多忙の原因を取り除く努力(合理化の推進や業務の取捨選択、適正人員の確保)を行うと同時に、生産現場が言う多忙の裏に、できない別の理由が隠れていることを見逃してはいけない。