古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
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 工場で改革活動をしていると、「変化を極端に嫌う」場面に出会うことがある。そこでは作業手順やルールをかたくなに守ることに固執してしまい、本来やりたい市場対応や生産改善が全く進まない。

 そんな工場を見てみると、幾つか共通する傾向がある。話ばかりで何も決まらない会議や、「スタンプラリー」など形式主義で書類の体裁にばかりこだわる業務が多い。前例のないことに取り組む人に対して批判が横行するなど、いわゆる官僚主義的な風土がまん延している。これらは、「大企業病」に侵された工場に見られる典型的な症状である。

 本来、大企業病の特徴でもある「官僚主義」とは、大きな組織を効率よく運営するために適した組織形態と言われるものだ。一方で、その効果が裏目に出た「逆機能」があることが指摘されている。例えば、規則を優先するあまりしゃくし定規な行動になったり、リスクを回避し過ぎて「事なかれ主義」に陥ったり、管轄外の業務を避けるための縦割り組織になったりすることだ。

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 これは官僚制の「逆機能」と呼ばれるもののリストだが、大企業病の会社にピタリと当てはまる。

強い工場づくりのポイント

 大企業病は、いまや中小企業にも見られる症状だ。既存の手順やルールを守ることが目的化してしまい、「改善のため」「工場を良くするため」といくら言っても、既存の規則やルールをかたくなに守り続け、変化に異常なほど抵抗する。当然、これでは改善効果が極少となる。市場や環境の変化に耐えることができる「強い工場」というのは、必要な仕事の手順やルールを確実に守る一方で、状況が変われば、その手順やルールを柔軟に変化させ、しなやかに涼しい顔をして製造が続けられる工場のことだ。

 コストと仕様の両面で市場が激変することが分かっていたのに、設備投資を止めるという決断ができず、工場が竣工した段階で「時、既に遅し」。市場は供給過多で、価格も下落。それでも工場の稼働にこだわった結果、業績が悪化し、その結果、事業売却や会社の存続すら危ぶまれる事態になるといったケースは枚挙にいとまがない。生産現場の活動も同じで、顧客のニーズが変わっているのに旧来の造り方に固執してしまうと、市場対応力を損ねてしまう。