子育て支援や街づくり、各種の届け出やゴミの収集まで、人々の暮らしに密接に関わる基礎自治体の活動は、実はデータの活用が最も遅れた分野の1つだ。議会や行政の現場では、しっかりした数字の裏付けなく、担当者の直感や地縁をテコに進む話も少なくない。逆に言えば、積極的にデータを収集・利用していくことで、飛躍的な改善が生まれる余地は想像以上に大きい。日経エレクトロニクスの記者を5年経験した後、横浜市議会議員を10年間勤めた伊藤氏が、異色の経歴が生んだ視点から、昔ながらの自治体に潜む課題をあぶり出し、データの活用が育む未来の政治の姿を考察する。(日経テクノロジーオンライン編集部)

2007年当時の筆者。元同僚の結婚式にて

 誰でも初めての経験は鮮明に覚えているものだ。しかし、私が最初に横浜市議会で一般質問に立った時のことを忘れられないのは、それ以上に、予想を超えた衝撃を受けたからだ。まさか行政が、ここまで数字を軽んじているとは思ってもみなかった。何しろ、災害時に予想される被災者数と、避難所が受け入れられる人数の間に、30万人以上のかい離があったのだから。

 自分の経歴から、人一倍、数字に敏感だったことはある。「企業が発表した業界初の数字は、本当に意味がある数字なのか?」。私が記者として駆け出しのころ、先輩記者からしつこく問われたことだ。私は2002年に日経BPに入社し、日経エレクトロニクスで約5年間、記者として過ごした。

 その後、縁があって横浜市議会議員となった。今はまた再び民間に戻って仕事を始めようとしているが、人口374万人を擁する日本最大の基礎自治体・横浜市で議員という立場から、数字に基づいた政策立案・執行、意思決定ができる行政をつくろうと10年間、働いてきた。まだ黎明期にあったオープンデータを横浜市議会で最初に取り上げ、旗を振ってきたのも、それがいわゆるバズワードだからではなく、今後本格的に到来する超高齢化社会・人口減少社会において、税の執行は最小のコストで最大の効果が得られるような社会にしていかなければ、立ち行かないとの思いからだった。わずか5年間だったとはいえ、記者時代に数字に対する厳しい姿勢を求められた経験を持つ者からすると、議会における数字に基づかない議論はまさに驚きの連続だった。

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