前回に引き続き、製品規格などを同業他社とともに策定する標準化と呼ばれる分野で、数々の要職を務める伊賀洋一氏に、標準化分野における日本の現在地点と、今後の取り組みについて話を聞いた。日本の半導体産業は「技術力で勝っても、ビジネスで負ける」と長らく言われてきた。1980年〜90年代に国内電機大手がこぞってDRAMを手がけていた時代は、技術力と投資能力が重要な競争ポイントであったが、その後の注力分野となったシステムLSIでは、「ビジネスモデルの構築」が大きな分かれ目となり、国内半導体メーカーの多くがグローバル市場で競争力を失う結果となった。特に標準化分野について、日本企業はこれを軽視する風潮がいまだあり、競争力低下の一端とも指摘されている。

 現在は関連企業、団体における国際標準化活動を支援し、SEMIスタンダード日本地区トレーサビリティ委員会共同委員長などの標準化分野における要職を務める伊賀氏に、標準化分野における日本の現在地点と、今後の取り組みについて伺った。後編となる今回は、日本企業や日本の産業界が取るべき標準化戦略や、伊賀氏の取り組みなどについて聞いた。

——日本企業、日本の産業界の標準化に対する取り組みをどう見ていますか。

伊賀洋一氏
(写真提供:パワーデバイス・イネーブリング協会)
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伊賀 基本的に日本の産業界における標準化の姿勢は守りの姿勢、言い方を変えれば性善説が前提となっている。標準化は基本的に10〜20年先の将来を見据えたものであり、足元の業績拡大や改善に直結するものではない。企業はすぐに大金にならないことは力を入れないことが多い。一方で、政府はこうした標準化作業を重要視している。

 問題はこれを民間主導で進めていくことに限度があることだ。日本以外の国や地域は「国策」として取り組んでおり、民間人が政府に出向して標準化の策定作業に参加するなど、国主導で取り組んでいる。要はお金の掛け方の次元が違うのだ。逆にこれじゃダメだとなれば、一気に引いてくるわけで、その辺のメリハリがしっかりとできている。米国、ドイツ、フランスなどは戦略的に、組織的に標準化作業に取り組んでおり、標準化分野においては他国をリードする立場にある。

——日本の産業界が今後も競争力を維持するために、標準化の分野ではどういった取り組みが必要でしょうか。

伊賀 考え方としては、守りの標準化から攻めの標準化に移行すべきだ。今も昔も日本のものづくり力は優秀であり、これを維持・強化していくには、攻めの標準化が必要だ。私が現在取り組んでいる標準化作業はいずれも攻めのスタンスを持ったものだ。

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