ドイツと日本、ものづくり構造の違い

 こうした大手企業から失われた加工技術を補っているのが、本連載でも紹介してきた中小部品加工業の存在です。彼らは「技術的に不可能」とされる加工課題も、その熱意と志で実現してきているのです。グローバル展開する大手企業を、極めて意識の高い中小企業がサポートする、というスタイルは日本独自のものです。

 日本と同様に世界有数のものづくり大国、ドイツの場合は大手企業をサポートする代表的存在が大学や公的な研究機関です。筆者は2012年にドイツ・ブレーメン大学に設置されている「最新加工技術研究所(略称IWT)」を視察しました。同研究所は250社からなる企業体連合からバックアップを受けており、予算の2割が各企業の供出する運営費で、予算の8割がプロジェクトごとの出資により賄われています。例えば、エアバス社のプロジェクトでは、アルミ複合材料の翼にリベット用の穴をあける際、切粉が内部に落ちずに、全て外部に排出される加工法を開発していました。

 ドイツのものづくりが強いのは、研究開発を行う科学者(=サイエンティスト)、設計開発を行う技術者(=エンジニア)、実際にものづくりを行う技能者(=マイスター)、この3者の立場が確立され有機的に結び付いていることです。そして、この3者を結び付ける触媒的な役割を果たしているのが前述のIWTなどの大学であり、公的機関です。

 日本は旧帝国大学などのトップクラスの国立大学であっても、非常に貧弱な設備しか持っていないケースが大多数です。ところがブレーメン大学は1971年の設立で比較的若い大学であるにもかかわらず、常に20℃に維持された恒温室で大理石の基礎に同時5軸超精密加工機を設置していたり、1台数億円もするような真空炉設備を複数台保有していたりするわけです。日本でも企業と大学との産学連携がかねて重要視されていますが、そのレベルもスケールもドイツとは比較にならない、というのが実情ではないでしょうか(図1)。

 そして、ドイツでいうところの大学・公的機関なみのサポートしているのが、日本においては従業員10~100人くらいの小企業・中小企業である、というのが筆者の見解です。

図1 ドイツと日本の、ものづくり構造の比較
図1 ドイツと日本の、ものづくり構造の比較
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