1. はじめに

 「新物質/量子構造に基づく発光デバイス研究の最前線と展望」と題したシンポジウムが、「第78回 応用物理学会 秋季学術講演会」(2017年9月5~8日、福岡)で開催された。同シンポジウムで京都大学 大学院 工学研究科 教授の野田進氏が発表した、フォトニック結晶レーザー(Photonic Crystal Surface-Emitting Laser:PCSEL)を紹介する。野田氏は講演で、フォトニック結晶レーザーの開発初期から現在に至る進展をレビューした後、高ビーム品質・高出力動作実現に向けた取り組み、さらには2次元ビーム走査を可能とする「変調フォトニック結晶」を有するレーザーの進展状況についても触れられた。

2. フォトニック結晶とは

 フォトニック結晶とは、屈折率が異なる物質を光の波長と同程度の間隔で並べたナノ周期構造の人工結晶である。光が内部に閉じ込められたり、侵入できなかったりする現象が起きる。フォトニック結晶と同様のナノ周期構造が、自然界で形成されたものもある。例えば、蝶の羽や宝石の一種がそうだ。フォトニック結晶と同様の原理で、ナノ周期構造による光の侵入阻止効果によって、見る方向によって光沢が変わりキラキラ輝く構造色を持つことが知られている。

 この基本原理は古くから知られていたが、ナノ周期構造を人工的に、かつ3次元または2次元的に作製することが極めて困難だった。このため、1990年代後半までは現実的なフォトニック結晶は存在しなかった。このフォトニック結晶をナノテクノロジーや半導体技術によって実現するとともに、光の閉じ込めや侵入阻止といった現象を利用して様々な応用の可能性を持つ光デバイスとして活用する研究が加速度的に進展している。この分野では、日本の研究者が世界をリードしている。

 フォトニック結晶レーザー(PCSEL)は、2次元フォトニック結晶のバンド端共振作用を活用して、通常の半導体レーザーでは実現不可能な大面積においてもコヒーレント動作を可能にするものである。1999年に、その基本概念の提唱と大面積コヒーレント動作の可能性が示された(図1)。その後、ビーム形状や偏光制御の実現、青紫色への展開、ビームの出射方向を電子的に走査可能なレーザー機能の実現など、これまでのレーザーの概念を覆すような様々なレーザー機能が実現されている。

図1 フォトニック結晶レーザーの開発の歴史
(京都大学の資料)
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 2014年には、0.2Wクラスのレーザーが商品化された。最近では、ワット級の単一縦横モード発振の実現、10W超の高出力化を可能とする新しい格子点構造の発見、さらにはビームの出射方向を2次元的に走査可能な新しい「変調フォトニック結晶」の概念が提唱されている。

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